コロナ禍のイベントで、オフラインとオンラインの相互接続OMOを考えた

オンとオフを相互につないで作品鑑賞

YCAMの施設内
懐かしのYCAM…今はどんな様子なのか

さて、時間になってスタート。まず、スケジュールと進行の説明を経て、参加者全員がそれぞれ簡単な挨拶と自己紹介でした。

続いて、オンライン組にテーマとなる1つの絵が示されました。ふむふむ、なるほど。テキストでメモしたり、スクリーンショット(禁止)こそ撮りませんでしたが、普段、こんなに絵のディテールをじっくり鑑賞することはあまりないかも。対面の距離だけでなく、時間的にも、他者への説明のための言語化という集中力においても。

ちなみに、最後の解説では、『一般に、美術鑑賞する人が、一つの作品を見る時間は、平均で10秒』という話が出ていました。ソーシャルメディアの影響で、今はもっと短くなっているかもなぁ。

今度は、その作品についてオンライン組が短く説明する時間。『何が描かれている?』『何をしているところ?』『色は?』『季節は?』『人物の年齢は?』など、コーディネーターさんのガイドに沿って、3人ずつ順番に、短く答えていきました。

それが2周して、いよいよ衝立が外されて作品とご対面。今度は、現地組が鑑賞して、それぞれが印象や、想像と合っていたところ、ズレていたところなど、いろいろな感想を口にされました。展示ケースの中の作品や会場の様子も中継され、オンライン組はここで初めて、絵の部分だけではない掛け軸としての作品なのだということを知りました。

私は、進行の都合もあるだろうなと思い(どうしても、つい運営目線がw)、聞かれた質問以上のレスはせず、後からも、敢えて自分から手を挙げて発表はしませんでした。ただ、後から学芸員さんに解説してもらった作品の詳細に、自分が気付いていたディテールや妄想が非常に近いところがあったのは、ちょっと嬉しかったところ。寝不足で意識が冴えてたのかも…てか、これこそ自画自賛になるじゃんw

ホンモノの拡張であり、別レイヤーのリアルとして

いつも思うんですが、世の中には、何かとホンモノvsヴァーチャル、アナログvsデジタルのような、安易な二項対立に持ち込みたい人たちが一定数います(その考え方そのものがデジタルなのも気付かずに!)。幸い、このイベントはそんなまとめには至らなかったのも、よかった点です。

私が感じている、オフラインの現場で得られるメリットはこんなところです。

  • 得られる情報がリッチで解像度も高い
  • 人とのコミュニケーション解像度も高い
  • リアルタイムのスピード感や緊張感
  • 付帯する体験も非常に多い
  • 空間や場所、時間の制約が、集中力を生む
  • (工夫すれば)匿名化できる余地がある

それに対してオンラインには、こういうメリットがあります。

  • 空間や場所、時間の制約を受けない(こともあるし、逆に制限されることも)
  • 反復や複製、共有が可能(なこともあるし、できないことも)
  • 記号化されたディテールを把握しやすい
  • (ほぼ)リアルタイムのスピード感や緊張感と、アーカイブのタイムシフト
  • (オフラインとは違う工夫すれば)匿名化できる余地がある

私は、これらの関係は「ホンモノの拡張」「別レイヤーのリアル」だと思っています。一方のメリットを認めることが、他方のそれを毀損することにはなりません。そうする必要がない。相互補完のいいとこ取りすればいいだけです。

海外の美術館でも、収蔵作品の高画質アーカイブを公開している施設があります。ディテールは、画面上の方がよくわかることもあり、4K/8Kの解像度でズームできたり隅々まで見られるのは、オンラインならでは。大体、現地に気軽にいくこともできませんし、日本国内でも、人気の展示会などは、流れ作業でじっくり鑑賞する余裕もありません。

ただ、現物を囲むその場全体の雰囲気だとか、額装や展示の様子、作品のマチエールやテクスチャーの立体感、質感などは、やはり現地の現物でなければ、十分に感じられません。前後まで含めた一連の体験ですからね。