事故や事件が起きた時、自社のソーシャルメディアをどう運用するか

ソーシャルメディアがなくてよかった?あったから炎上してる?

現状の両社は、ソーシャルジャスティスウォーリアーと呼ばれる、社会的正義を御旗に敵を糾弾する戦士たちによって、度を超した誹謗中傷に晒されているはずです。恐らく現場には、クレームの電話(もしかするとFAXや手紙も)が殺到しているでしょう。直接のステークホルダー(利害関係者)ではない、不満を抱えている人たちにとって、反抗しない、叩いても構わない対象を徹底的にタコ殴りにする高揚感は、何者にも代えがたい娯楽の一つですから。

当たり前ですが、ソーシャルメディアのマネージメントが上手くいっていれば、事故が避けられた訳ではありません。Instagramのフォロワーが多い蕎麦屋が、蕎麦が旨くて、いい蕎麦屋だとは限らないのと同じです。蕎麦屋の本分とは、旨い蕎麦を、客に妥当な価格で提供すること。海運業者なら、顧客から預かった荷物を、安全確実に届けることでしょう。

さまざまな場所でシェアされた情報や書き込まれたコメントも、漏れ出した燃料油同様に、一部は洗い流されてキレイになるかもしれません。しかしそれ以外は、長い期間を漂って黒い痕跡を残すことになります。今後は、事故の補償はもちろん、株価への影響や株主への説明責任、人材募集など、両社への影響は徐々に広範囲に及んでいくはずです。B2Bビジネスにとって深刻なのは、取引先がリスクを避けるために契約を停止・回避したり、保険料が値上がりすること。銀行との交渉や、従業員の士気にも影響するでしょうし、乗組員の教育コストも必要なはずです。賠償金を支払って事業を継続できるだけの体力があるか?というネガティブインパクトかもしれません。

ソーシャルメディアを運用していなかったり、一方的な情報発信だけに限定していることが、両社にプラスになっているか、今後の信頼回復にポジティブな効果をもたらすかは、現時点ではわかりません。ただ、十分な説明責任のためには、丁寧な情報発信が不可欠です。そのためには、各ステークホルダーの窮状や意見、感情に真摯に耳を傾け続けることが必要なはずです。


一般の企業や小規模ビジネスにも、いつトラブルが発生するかはわかりません。大規模災害、納品した製品の瑕疵、法令違反、異物混入や製造ミス、搬送中の事故、アルバイト店員の悪ふざけなど、リスク要因を考えればいくらでもあげられます。

では仮に、ネガティブ情報が広がらないように、ソーシャルメディアを一切使わないことが、組織やステークホルダーにとって得策なのか?使うとしたら、目的は何なのか?どのような態度で臨むべきか?何を守るか?9月1日の防災の日も近い今、ソーシャルメディアの使い方についても、見直す機会が必要かもしれません。