iPhoneというホッケーパックはどこへ向かうか

あまりにも自分の中で盛り上がる気配がないので、このエントリーを書いておきます。

先頃、iPhoneの日本国内でのキャリアが、ソフトバンクモバイルに決まりました。下馬評では、No.1キャリアであるdocomo有利とも伝えられていた中での逆転劇。まだ、一社独占販売と決まった訳ではありませんが、とりあえず、長い間閉ざされていた扉は開きそうです。

しかし、なぜか、ワクワクもドキドキもしなかったんですね。日本語表記が何とも間の抜けた「アイフォーン」になるということ以外の理由で。人間とはどうも、喜びよりも悲しみに大きな関心を払ってしまう生き物らしく、つらつらとiPhoneの不安要素を挙げればきりがありません。

バッテリー

iPhoneのバッテリーは持ち時間が非常に短い上に、ユーザー自身で取り外しできないのがNGなのです。そうでなくても、3GやBluetoothは消費が激しいので、せめて、夜充電しておけば、次の日は1日中外で使うのに十分だと嬉しいですが(何も、永遠にYouTube見続ける訳ではないので)。バッテリーが切れて肝心の時に通話できなくなってしまうような事態は本末転倒。音楽やビデオはもうiPod nanoやshuffleでいいから、その分、バッテリーの持続時間をもっと!と叫ばずにはいられません。

重量とサイズ

まだまだ、スマートフォンとしては仕方ないか、というレベルでの妥協を強いられるでしょう。手がさほど大きくない私などには、Appleのサイトで公開されているCMほど片手で楽に持てきない気がします。ポケットに入れるにしても、首から下げるにしても、ちょっと辛い…かといって、ベルトにくくりつけるオジサンスタイルもどうかと、Apple StoreでiPod touchを手にしつつ考えたりします。

国内の一般的な端末との違い

片手だけの入力やブラインド入力ができない?絵文字やデコレーションメールが無いなんて?長いネールが邪魔になったりしないビジネスユースには、そんなことは問題ありません。むしろ、電子マネーやワンセグ機能という日本独自の機能にしても全く色気を感じない訳ではありませんが、トレードオフだと割り切ればそれも仕方ない面も。外部メモリカードのスロットも探さないことにします。ただ、300メガ以上のカメラやGPS機能、Flashコンテンツのサポートなどについては、淡い期待を抱きたいですね。

その他

個人的に気になるバイブレーターとボイスレコーダー機能、Nike+のサポートなどなど。

本体価格と通信費

恐らく、決して安くない初期投資と、既存のいわゆるスマートフォンカテゴリを基準に考えると、毎月の通信費で10,000〜12,000円あたりではないかと思われる通信費。
ソフトバンクモバイル同士だと24時間いつでも無料なのかと思っていたら、プライベートタイムの夜間は対象外だったということを後から知って頭が真っ白になるという意味の『ホワイトプラン』などが、そのまま適用されるのか否か。
いやいや、通信データが大きいiPhone専用プランが打ち出される可能性もあります。ガラパゴス化しているとも揶揄される日本の携帯電話業界の破壊王が、どのようなアグレッシブなプランを考えているのか見守りたいと思います。

これらの点もいろいろ考えると、iPhoneユーザーの多くは、国内のキャリアの端末を簡単に切る訳にも行かないのが現実でしょう。何らかの形で併用せざるを得ない。ソフトバンクモバイル端末と2回線契約で割り引き、とかはあり得るかもしれませんし、これを機会に最近人気上昇中のE-Mobileとの併用も考えられます。となると荷物も、会社または個人の端末とiPhone、さらにiPhone用モバイルアダプターまで持ち歩けば、減るどころか逆に増えてしまいます。結局、コストも持ち物も減ることはなさそうです。

と、突き詰めるとあまりにも気分がネガティブになりそうなので、ポッドキャストで公開されていた1年半前の2007年のMACWORLD EXPOの映像を引っ張り出してもう一度眺めました。とにかくこの時のキーノートスピーチは、満を持してiPhoneを発表する26:20秒から3分半ほどのシークエンスが圧巻!

Macworld San Francisco 2007 Keynote Address
http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewPodcast?i=26524322&id=275834665

1時間45分のスピーチの最後は、もはや単なるコンピューター企業ではないことを象徴するためにApple Computer, Inc.からApple Inc.への社名変更の発表で締めくくられました。その時に、引用されたのは、Wayne Gretzkyという有名なプロアイスホッケー選手がインタビューに答えた時の言葉でした。

”I skate to where the puck is going to be, not where it has been.”
「私が滑って行くのはパック(ホッケーで運ぶ黒い円筒形の球)が向かって行く先だ、パックがあった元の場所ではない」

なるほどね、悪くない台詞です。

さて、来週、世界をさらに熱狂させるだろう角丸の四角いパックが向かっていく先を、たとえおぼつかない滑りでも追っていくかどうか思案のしどころ…ですが、文句言いながらでも行くんだろうなぁ。