『2035年の世界』高城 剛

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著者 : 高城剛
PHP研究所
発売日 : 2014-10-22
著者は、昨今とかくイロモノ扱いされがちだが、世界を駆け巡るビジョナリーだ。そのユニークな視点にはフューチャーパイレーツ時代から注目していたが、「ハイパーメディアクリエーター」という懐かしの肩書きはともかく、彼自身がメディアであり続けてきたことは、知っている人は知っている。

2035年といえば、2015年から20年後。日本の18歳人口が明らかな下降に転じる2018年に生まれた子どもが高校を卒業する節目だ。東京五輪の効果や悪影響が出ているだろう15年後であり、人工知能が人間の脳を超える技術的特異点シンギュラリティーまで残り10年というタイミングだ。過去の20年とは比較にならない激動の時間だということは、素人でも分かる。

老いた国になっていく日本と反対に、成長する東南アジアやアフリカ、南米。医療ツーリズムのニーズは高まり、そこで活躍するのはナノテクロボットとライフログすべて。移動手段も、エネルギーと共に緩やかにしかし革新的に変わっていく。そして、食料と水、そして人間の心や精神が、さらに重要視されていく。今の職業のいくつが粛正されているやら。その時、人間は、個人は、自分の価値をどこに見いだすのか。

テーマは、テクノロジーだけに限らず、音楽業界から国際政治、経済など幅広い。各項目は、さらりとコンパクトにまとまっているので、それぞれの専門分野から見れば物足りないだろうが、取り上げられているいろいろな要素が相互に影響し合っていることが、俯瞰的に把握できる。

声高に日本をdisって警鐘を鳴らすでもなく、クールジャパンにヨイショしている訳でもない温度も、自分には適していた。マスメディアや監督官庁への批判も臭わせる諦めもあり、ユートピアだけでなくディストピアも描かれている。いろいろなピースを集めては、ピッタリはまるところにはめて、ぼんやりとでも大きな未来図が描かれている。本書で語られている未来がすべて進行中で、一部は半ば実現過程にあり、信じるか信じないかではなくすでにそうなっている。後戻りはできない。

こういう未来予測に接したときに、さて、どうしたものか。著者と同じことを中途半端に実践しようとすれば即死しそうだし、どうせ自分には直接関係しない・影響ないと無関心を装うのも、慌てふためいて足下が疎かになるのも滑稽だ。

道案内のサインはサインとして目にした。全てを理解できないとしても、これから何度も見聞きするだろう。その上で、どちらの方向へ、どれぐらいのペースで、誰とパーティーを組んで進むかは、結局自分次第なのだ。
…と、ある程度未来予測ができている彼でも、女優の扱いは難しかった、と。いやはや。

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