アントン・コービン 伝説のロック・フォトグラファーの光と影(字幕版)

Anton Corbijnは、ロックスターや映画人の撮影で著名なカメラマンだ。U2やArcade Fire、Depeche Mode、Red Hot Chili Peppers、Metallica、Clint Eastwood、Naomi Campbellなど、そうそうたる名前が並ぶ。

この映画では、彼が撮影のために旅をしているシーンが何度も映し出される。荷物を抱えて飛行機や列車、車で移動し、ホテルにチェックイン、打ち合わせや撮影した後、荷物のパッキング、そしてまた移動。

また、孤独なオランダ人としての幼少の姿にも迫っている。牧師である父、教会。世の中の全ての不幸を抱えたような、抑圧された家の中の雰囲気。死者の近くに常に寄り添っていた自分が、未熟だったと語る。家族の姿も、合間で挿入される。兄を心配する妹、高齢の母、一族の集まりと笑顔。

ポラロイドでアングルや光、位置を確認し、フィルム撮影に拘る。『デジタルカメラでは、思い通りに撮れない』と嘆きつつも、デジタル処理する編集スタッフとのやり取りを繰り返し、渾身のショットを作り出す。

Antonが抱える幼少の暗さは、政治的なメッセージ色が強い初期のU2が「救世主パラノイア」「自分勝手なヒロイズム」と揶揄された、孤独な姿と重なる。Bonoに『彼の写真に写っているような自分になりたい』、『どちらも光を追い求めている』と静かに離す。Antonは写真で、U2は音楽で、暗さの中に光を追い求め続けている。

連続したスティルイメージとしての映画だ。