
7月10日は、ニコラ・テスラ Nikola Tesla記念日。100年以上前の一人のセルビア系アメリカ人発明家が、人類を第二の産業革命へと導いた。モーターや電気、無線通信技術、X線など、幅広い彼の発明の恩恵を受けていない現代人は誰ひとりいない。
テスラは、史上で最も偉大なナード(nerd 人付き合いが苦手なテクノロジーオタク)だった。ギーク(geek イケてる技術者)ではなかったのが残念だけれど。イーロン・マスクが、エジソンモーターズではなくテスラモーターズ(現テスラ)を社名に選んだことに、深く敬意を感じる。ギークでもなければ、ナードですらない一般人ができる感謝として、長文でニコラ・テスラの功績と人生を紹介したい。
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エジソンは「似非ギーク」のCEO
大抵の人はトーマス・エジソンのことを、電球を発明した人、電気の父だと思っているだろうが、違う。彼は、自分よりも先に電球の発明に挑戦していた他の22人のアイデアを改良し、ただ電球の『売り方』を考えついただけなのだ。つまり、彼ははギークではなく、CEO(最高経営責任者)だったのだ。
実は、テスラは駆け出しの頃、エジソンのために働いたことがあった。エジソンはテスラに、うまく行かずに困っていた交流発電機とモーターの問題を解決するように、現在の価値に換算して100万ドル(約124万円)で頼んだ。テスラがエジソンの機械を修理し、約束した代金を要求したところ、エジソンはこういって鼻で笑った。『テスラ、キミはアメリカ人のユーモアってものが分かってないねぇ』。
エジソンと仲違いした後、テスラは自分の「交流(AC)」電気の仕組みに取り組んだ。エジソンの直流システムは、いち四方マイルごとに発電所が必要だったので、遠くまで送電できなかった。一方、交流は細い送電線を使い、高い電圧を持ち、長距離の送電が可能だった。
そこで、エジソンはどうしたか?彼は、テスラの交流電気を使って、集めた犬や猫を公開で感電死させて見せた。彼の目的は、テスラの交流システムを公に誹謗中傷し、家庭で使うには危険すぎると人々に信じ込ませることだった。エジソンは、ギークの立場で活動した典型的な「似非ギーク」だった。
ラジオにレーダー、X線、地震発生装置まで
テスラは、間違いなく天才だった。8カ国語を操った。彼は、すべての本を記憶し、意のままに暗唱できた。装置をすべて頭の中で視覚化できたので、何も書き記すことなく作り上げられた。驚くようなものを発見するのに、書き留めることを忘れることで知られていた。
テスラの発明は実に幅広い。
グリエルモ・マルコーニは、ラジオを発明したことでノーベル物理学賞を受賞した。しかし、彼の実験はすべて、それよりも前にテスラが行ったことを下敷きにしていた。マルコーニは、大西洋を越えたメッセージを初めて送信し、世界的に有名になった。そしてこれがテスラの返事だった。『マルコーニは、いい仲間だ。続けさせてやってくれ。彼は私の特許を17個使っている』。
1935年にレーダーを発明したのは、ロバート・A・ワトソン-ワットというイギリス人科学者だと記録されている。しかし、このアイデアはその18年も前にテスラによって考え出されていた。彼は、第一次世界大戦の初期に、アメリカ海軍にレーダー技術を売り込もうとしていた。残念ながら、当時、アメリカ海軍の研究開発部門の幹部がエジソンだったので、レーダーは実戦では役に立たないと軍に信じ込ませた。
ヴィルヘルム・レントゲンは、一般には、X線の発見者として記録されている。これも、テスラの発明だ。最初にX線が発見された時、視覚障害やその他の慢性病を治療できると信じられていた。テスラはX線が危険だと警告し、医療実験をすることを拒んだ。
一方、エジソンはすぐにX線実験の人体実験に取り掛かった。従業員のひとりであるクラレンス・ダリーは、放射線に強く曝された結果、両腕両脚を切断しなければならなかった。だが、その甲斐もなく、結局、彼は縦隔(じゅうかく)ガンで死亡した。ダリーは、放射線による実験で死亡した最初のアメリカ人だと考えられる。エジソンは度重なるX線の放射により、ほとんど目が見えない状態になってしまった。
ナイアガラ滝に、初の水力発電所を建設し、この種の動力が現実的なエネルギー源になり得ることを証明したのも。発明されるほぼ半世紀前に、低温工学を実験していたのも。後にトランジスター開発に使われる特許を、100年以上も前に持っていたのも。宇宙空間からのラジオ電波を録音した最初の人物も、地球の共振振動数を発見したのも。
稼働させればニューヨーク市の周辺全部をほとんど破壊するような、地震発生装置を作ったのも。球体の形状をした雷で、地上からある程度の高さの上空をゆっくり漂って移動する球電光を実験室で作り出すことに成功したのも。リモートコントロールを発明したのも、ネオン雷光、無線通信、現代の電気モーターも。
すべて、ニコラ・テスラが発明したのだ。

Nikola Tesla, with his equipment Wellcome Library, London CC BY 4.0