時間管理がダメ過ぎる私がやっとToggl Trackなら続けられてる理由

Toggl Trackアイコン
Toggl Track

作業に掛かった時間を計測する専用サービスがいろいろあります。私は今まで、いろいろなタイムトラッキング系ユーティリティーを使ってきましたが、ほとんど長続きしませんでした。それが、Toggl Trackを使い始めてから約10ヶ月は続けられているので、それについて紹介します。

[追記 2024/07/18] 実は、サブスクリプションの更新時に、他のサービスへの浮気もしかけていろいろ調べて比較しました。でも、他のサービスは、プロジェクト管理とセットだったり、一つのプロジェクトの中の繰り返しタスクをサッとオン/オフできなかったり、UIが使いづらかったり。で、結局、そのまま更新を選択して今も使い続けています。

そもそも、時間管理ってマイクロマネージメントされるためじゃない!

Toggl Trackの説明に入る前に、まずこれを紹介させてください。Toggl Trackを使っている途中で読んだ公式のステートメントなんですが、個人的にとても腑に落ちたのもあって、使い心地がいいなと感じるヒントにもなっている気がします。

それがこの「私たちが監視を信じない理由」と題された公式ページ。ここでは、Toggl Trackを使う目的が、従業員の監視やマイクロマネージメント(細かい管理)、詮索、スパイ活動のためではないと明言されています。2つの理由を挙げて、『従業員を監視することは時間の無駄だ』と、バッサリ断罪されています。

Why We Don’t Believe in Surveillance | Toggl Track

一つ目の理由は、スクリーンショットや位置情報、マウスの動作、Webのログなど、監視データを取得したところでノイズにしかならず、真の洞察は得られないこと。もう一つの理由は、監視は管理が機能しているような錯覚を与えるだけであり、回避や不正、妄想を助長するだけだということです。Toggl Trackの共同設立者が旧ソビエト連邦出身で、『完璧な監視システムを構築することは不可能だと知っている』という言葉は、説得力があり過ぎ!

つまり、何時間デスクにいたか、どれだけ会社に出社したかという見せかけのインプットではなく、仕事のアウトプットによって測定されるべきであるということ。誰もが自分の好きなように自由に働いてパフォーマンスを上げるには、監視よりも信頼が重要だと力説されています。

人を監視して抑圧するモノの本性はコレだった!

この文章を読みながら、ふと、パノプティコン(Panopticon)を連想しました。パノプティコンとは、映画やマンガなどでもよく登場する監獄施設で、中央の監視塔から放射状に伸びた一望監視施設と呼ばれる施設のこと。つまり、少人数の監視者で効率よく対象者を監視する、刑務所や閉鎖病棟などの建物の構造です。この3Dアニメーションを使ったYouTubeビデオが、ゾッとするほどとても分かりやすいので、ぜひご覧ください!

Jeremy Bentham’s ‘perfect’ prison | The Panopticon – YouTube

実は、パノプティコンにはとても重要な点があります。それは、対象者の行動を抑圧しているのは、『監視されている』事実そのものではなく、『監視されているかもしれない』という心理的ストレスが、人の行動を抑圧する効果を発揮するというこれまた非常に恐ろしい点。疑心暗鬼こそが、人間の心と行動、さらには思考を管理する武器として作用しているのです。

新型コロナウイルスが蔓延し、突然リモートワークへシフトする必要が出てきたタイミングで、組織は従業員を何とか監視しようとしました。マウスやトラックパッドの動きやパソコンの負荷を監視したり、常にカメラのONを強要したり。しかし、それらは生産性や信頼、新しい発想の点から見て、逆効果になるリスクが大きいのです。

Toggl Trackはこんなサービス

長い前置きでしたが、さて、ここからはToggl Trackの具体的な機能を紹介します。

Before Toggl, Tracking Time Was… – YouTube

  • 何の作業にどれぐらい時間が掛かったかを(半)自動で管理・分析できる、タイムトラッキングサービス
  • プロジェクトやクライアント単位で管理可能。複数のチームメンバーで共同管理できる。
  • API経由のインテグレーションは、Appleカレンダー/Googleカレンダー/Outlookカレンダー/Salesforce/Asana/Photoshopなど。
  • ブラウザー機能拡張も、Chrome/Firefox/Notion/Todoistなど充実。
  • macOS/Windows/iOS/Android/Apple Watchアプリあり。
  • GoogleスプレッドシートやExcel、Word、PDFの時間管理テンプレートあり。
  • 自分やチームの稼働状況を分析できるアナリティクス機能あり。
  • 請求できる作業時間とは別に、請求できない時間(学習や検証など)も分けて登録できる。
  • 一定時間の集中と、短い休憩を繰り返して、全体のパフォーマンスを上げる、ポモドーロテクニックもサポート。
  • 一週間の活動状況を記録したメールが、レシートとして届く。
  • ログをCSVで書き出したり、チームの情報をCSVで読み込んで一括登録が可能。
  • 連携先のカレンダーでログを表示させるには、有料プランのサブスクリプションが必要。同期は、Toggle Track→外部カレンダーの一方通行。
  • プランは、無料/スターター $9/プレミアム $18/エンタープライズ。
  • 別アプリとして、チームプランを立てるToggl Plan、スキルベースの人材募集のToggl Hireあり。

Toggl Trackを使うと幸せになれる人

  • 自分の作業状況を時間管理したい・する必要があるビジネスピーポー
  • 組織や他者に管理される前に、できる範囲で自分で管理したいパーソン
  • 予定が頻繁に変わったり、深夜早朝や週末、休日や、日付を跨ぐこともある非ワークライフバランスな皆さん
  • 会社やチームで規定されたサービスが他になく、情報システム部からも怒られない権限が許可されている渡世人
  • 今まで何度もタイムトラッキングで失敗や挫折を繰り返してきたリベンジャー

Toggl Trackのココがイイ!

  • とてもシンプルで使いやすいUIなので、日常的に使い続けるのにまったくストレスがない。
  • 一旦登録した後やスタートを忘れていても、時間の修正が可能。デスクトップでスタートさせたタイマーを、モバイルで停止・編集できる。
  • インテグレーション先として、AsanaAppleカレンダーがある(ClickUpは、プロジェクト管理として競合にあるAsanaをサポートしていない)。カレンダービューもサポートしていて、Mondayよりリーズナブル。
  • レポートは、15分単位など、各プロジェクトごとの時間をある程度ざくっとまとめられるオプションあり。
  • API経由で連携できるサービスなら、混成チームで各自が別々にタイムトラッキングサービスを使っている場合も、状況を把握し合える。
  • 長時間稼働していたり日付をまたぐと、メールでアラートが届く。

Toggl Trackのココはダメだったり、イマイチ…

  • 外部カレンダーとの同期が、直近の2週間だけ。過去の記録を参照できないので、これがちょっと困る(回避策を後述)。
  • UIはすべて英語表記。日本語にローカライズされていないとダメな人には合わない。

Toggl Trackの使い方

カレンダー風のToggl Trackの基本操作画面
カレンダー風のToggl Trackの基本操作画面

使い方は本当にシンプル。タイムトラッキングで何度も挫折を繰り返してきた私が、一年近く続けられてきたのは、ストレスのないUIのお陰です。
私の場合は、現状、調査や確認の一部や、生成AIのテスト、新しいサービスやツールの学習時間は計測していません。純粋に、理論上は報酬として請求可能な作業時間だけを計測しています。本当は、プライベートな時間以外は全て計測した方が、より正確な分析が可能です(効率化の分析と支援機能が強化される傾向)。

  1. Webブラウザーまたはモバイルアプリでアカウントを登録し、ログインする。
  2. 「Settings」と「Organization」で自社とチームの情報や基準単価を設定する。
  3. クライアントとプロジェクトを登録する。必要に応じて、タグも登録する。
クライアントやステータスは、プロジェクトごとに把握可能
クライアントやステータスは、プロジェクトごとに把握可能
  1. 作業を開始したら、[>]ボタンで記録をスタート。Chrome機能拡張も便利。
  2. Webブラウザーの場合、タブのFaviconは、Toggl Trackがアクティブになっている時はピンクにハイライトされ、計測していない時はグレーアウトされる。
  3. 終了したら[□]ボタンで停止する。または、新しいタスクを開始させると、自動的に切り替わる。
  4. 記録を確認し、必要に応じて修正する。
  5. 分析やレポートを確認して、効率化と改善の参考にする。
作業中でもオン/オフできるブラウザー機能拡張が便利
作業中でもオン/オフできるブラウザー機能拡張が便利

もちろんカレンダーとも同期可能…ただし、過去2週間だけ!

前述の通り、有料プランを契約すれば、Toggl Trackの記録をAppleカレンダーやGoogleカレンダーと同期できます。ただし、2週間より以前の記録が同期されません。また、Toggl Trackのサブスクリプションを解除した場合も、ログが消えてしまいます。これは厳しい!
仕事は多くの場合、先月や3ヶ月前、前年の記録を参照したり、複製して予定を立てたりすることが普通にありますよね。たった2週間しか遡れないことや、何かあった時にバックアップが残せないのは非常に困ります。
ただ、これを回避する方法は割と簡単で、定期的にCSVでログを書き出し、それをカレンダーで読み込む方法です。Appleカレンダーの場合は、一旦、Googleカレンダーに読み込み、それをAppleカレンダーに同期させて登録カレンダーを変えるという、ちょっと面倒なステップですが、過去の記録が失われるよりはましです。

Googleカレンダー(経由でAppleカレンダー)に読み込めばOK

  1. Toggle Trackの「Reports」>「Detailed」で、ログを書き出したい期間を表示させる。「Export」>「Download CSV」でCSVファイルとして書き出す。
  2. 書き出したCSVファイルを編集する。Googleカレンダーにインポートするには、ヘッダーは英語である必要あり。さらに、登録する内容は「Description」のままはダメで、「Subject(Subjectsはダメ)」であることが必要。詳細は、Googleカレンダーの仕様を確認。
    例)
    Subject | Start date | Start time | End time
    ミーティング | 03/15/2024 | 10:00 AM | 11:00 AM

Google カレンダーに予定を読み込む – パソコン – Google カレンダー ヘルプ

  1. Googleカレンダーのギアアイコン「設定」>「インポート/エクスポート」>「インポート」で、CSVファイルをGoogleカレンダーに読み込む(私は、Appleカレンダーへ転送専用のカレンダーを設定)。インポートの成功を確認する(エラーはアラートが表示される)。
  2. AppleカレンダーにGoogleカレンダーを参照先として登録し、しばらく待つと、Toggle Trackから読み込んだ過去の実働時間が表示される(直近の2週間はダブって表示される)。ただし、同期されるタイミングによって、全ての記録が完全に一度で表示されるわけではないので、目視チェックをオススメ!
  3. Toggle Trackの過去の時間を全て、Appleカレンダーに変更する。また、縦軸の表示範囲を24時間まで広げておかないと、深夜や早朝を見落とすので注意(ただの働き過ぎ!でも海外の時間帯のイベントもあるし…)。変更するたびに、Googleカレンダー側の記録が消えていく。
  4. iCloudで同期している他のAppleデバイスでも、カレンダーが同期されたことを確認する。
  5. 適度なタイミングで、定期的にこのフローを繰り返す(私は、月初と月中の約2週間ごとに処理していますが、AutomatorかKeyboard Maestroで自動化したい!)。

そもそも、なぜタイムトラッキングが必要か?

タイムトラッキングが必要な最大の理由は、マクロな視点から言えば、時間というリソースがすべてに優先して貴重だから。ミクロで言えば、時間管理とレポートの提出を要求されることがあるからです。

フリーランサーの私はいろんなスタイルで働いていますが、報酬体系はプロジェクト単位の予算で契約するか、時給計算のどちらかです。前者の場合は、合意したゴールを決められた時間と金額で達成することが条件で、タスクにどれぐらい時間が掛かったかはあまり関係ありません。速く終わらせられるのは、それだけのスキルやナレッジの蓄積があるから。余分な時間は、その分、他のことに割り当てられます。

一方、後者はできるだけ避けています。質ではなく量が基準になってしまう、時給や人日計算だからです。自分のスキルを使って短時間で終わらせても、時間内でできるだけ高いクオリティーを実現しても、評価されないからです。それどころか、ダラダラと長時間働くほど利益になります。別に、私でなくて構いません。

かといって現実には、何もかもグロス計算されるプロジェクトも考え物。組織側の事情で、契約としてはプロジェクトだけれど金額は時間計算で、しかしなぜか、超過した時間分を追加請求できない場合もあり、都合のいい「定額働かされ邦題プラン」だと勘違いされがちです(もちろん、次のお取り引きはお断りしています)。

そのため、プロジェクト単位でも時間単位でも、稼働時間の報告としてレポートが必要なことが多いのです。パノプティコンで監視されたくない私は、タイムトラッキングを自分の時間を管理するためと同時に、他者に管理を委ねきってしまわないために使っています。

それなのに、なぜタイムトラッキングが長続きしなかったのか?

そんなに重要なら、何としてでも続ける必要があったはずなのに、なぜ、今まで続けられなかったのか?長年、挫折を繰り返してきた私の場合、主な理由は以下の通りでした。高速ネットワークやモバイルデバイス、クラウドの普及もありますが、今回、Toggl Trackでやっとカバーできたと言えそうです。

  • とにかく、時間と予定を登録して、いちいちオン/オフするのが面倒。
    →ブラウザー/ブラウザー機能拡張/モバイルアプリ/(私は使っていませんが)デスクトップアプリやApple WATCHアプリなど、どこからでもスタート/ストップが可能になった!
  • 複数デバイスの同期に対応していない・対応させるのがこれまた面倒。
    →上記の通り。人によっては、WindowsやAndroidも混在してるはず。
  • Googleカレンダーには同期できても、iCal(以前のMac用デフォルトカレンダー)に同期できない。
    →有料ではあるものの、可能2週間以上前のログも、面倒ながら同期可能。
  • 時間管理の結果は、すべてのクライアントから求められるわけではない。
    自己管理と分析の一つと捉えれば、求められなくてもやっておくことも有効。
  • 海外サービスを日本語環境と時間帯で使っていると、UIがちょっとストレス。
    問題なし。時差もない。
  • プロジェクト管理サービスAsanaの場合、連動しているタイムトラッキングサービスはHarvest Timeだが、Businessプラン以上に限定されている。
    →Toggl Trackの方が遙かに柔軟でリーズナブル。API経由でインテグレートできる。

Toggl Trackは、使いやすさや見やすさと機能、コストのバランスが優れているサービスだと思います。自身を持ってオススメできます。私みたいな挫折組にはなおさら!

正直、『いちいちボタンを押させず、何をやっているかぐらい賢く判定して、自動記録してくれてもいいのに…』と思わないではありません。しかしそのためには、マウスやキーボードの操作、画面表示、カメラとマイクによる人物の状況把握など、かなり詳しい操作情報を渡さなければならないはずで、それこそが前述の監視です。プライバシーのセキュリティーリスクが高まるだけでなく、信頼を阻害する要因にもなり得ます。

時間と成果という生産性について、常に意識付ける意味でも有効なサービスだと思うので、引き続き使っていきます。