クラウドソーシングを上手く使うとテレワークのヒントになるか!?

少し前にひと区切りを迎えたとあるプロジェクトで、久しぶりにクラウドソーシングサービスを利用したので、その感想や気付いたことを紹介してみます。スムーズなテレワークにも、ちょっとしたヒントになるかもしれません。

…と、書き出しておいていきなりこういうのもアレですが、個人的には、クラウドソーシングサービスにはあまり過度な期待はしていないんです、残念ながら。10年以上前から、いくつかのビジネスマッチングサービスは、主に受注側として使ったことはあります。ただ、コストと手間、継続性の面から、あまりいい印象を持っていなかったのが正直なところです。

それでもこの記事を書こうという気になったのは、今までとちょっと違う使い方やチャンネルを使ってみたのと、決してデメリットばかりでもなかったので、自分が受注側になる時のことも含めて、改めて気をつけたい点を残しておこうと思ったからです。

この記事が参考になるかもしれない人

  • クラウドソーシングサービスで、仕事を受けようとしている・副業を考えている人
  • クラウドソーシングサービスで、仕事を誰かに頼もうとしている人
  • テレワーク(リモートワーク/在宅勤務)をやっている人・この春からやり始めた人
  • テレワークをマネージメントする立場の人
  • オンラインで仕事のやり取りをすることが多い・これから増えそうな人

ざっくりした結論

○発注する側なら

  • クラウドソーシングサービスで意識するのは、コミュニケーションのトータルコストのマネージメント
  • 成果物のクオリティー、納期、最低限の信頼関係とのバランスも重要。単発の案件のコストを切り詰めようとすると、他の何かが犠牲になる可能性あり。
  • 信頼できるパートナーになり得るかは、複数回のタッチポイントなり受発注がないと、判断は非常に難しい
  • そこをある部分補完するのがソーシャルメディアだが、クラウドソーシングサービス側は基本的に外での接点を許可しない。それを無視してまで、ソーシャルメディアでのフォローが双方にプラスになるかは、企業に勤める人が副業先として、クラウドソーシングサービスを利用している場合なども考えると、正直、分からない。
  • クラウドソーシングサービスにしても、受発注相互の緩やかな信用保証とマッチングという点では、一定の機能は果たすか。

○受注する側なら

  • 積極的かつ多層的なコミュニケーションは重要。
  • 発注者が上記を意識していることを(もちろん、皆こういうことを考えているとは限りませんが)、受注者としても意識
  • (開示できる)実績の明示、具体的な提案、透明性や倫理規定の遵守
  • 早めの相談やラフ提示
  • 組織に所属しているなら、就業規則との調整
  • 基本は、普通の仕事先や同僚と一緒に働く時と同じ

今回のプロジェクトの概要(当初の予定)

  • とある企業のオウンドメディアサイトのコンテンツ制作(さらに大きなプロジェクトの一部)
  • kotobatoはそのディレクション 間にエージェントあり
  • 立ち上げではなく、運営管理の続行と拡大
  • クラウドソーシングサービスで、制作協力者を募集
  • 募集から制作、納品までで1ヵ月弱
  • 募集人数は4〜5人程度か 条件が合えば、数ヶ月の長期契約

発注者としてしたこと

  • プロフィールのアップデート
  • 本人確認用証明書のアップロード
  • 依頼したい内容のまとめ、資料作成(随時更新)
  • RFP(提案依頼確認)の整備、具体的な条件提示
  • 目的の確認、関係各社との調整や交渉
  • ビデオ・オーディオ会議の時のセキュアな環境
  • プロジェクトとしてのスケジュールやタスク、セキュリティー、コスト管理、その他

しなかったこと

  • 自分の実績やプロフィール写真の更新
  • ソーシャルメディアで、急にお利口な言動になること
  • 応募者を実名顔出しの人に限定すること(OKな人には一定の安心感はあったものの、基本的にはアカウントがあり、成果物のクオリティーが満たされていればOK)
  • ビデオ・オーディオ会議の強制(ただし、初回のみ、どちらかができた方が結果的にスムーズだった)
  • ビデオ・オーディオ会議のキャプチャー、録画や録音(同上プラス信頼の面で)
  • 応募者のソーシャルメディアでの検索(単に手間とリスクのバランス)
  • すでに稼働しているプロジェクト管理サービスへの招待(規模や時間が限定的だったため、クラウドソーシングサービスの中で完結)

数字で見る今回の利用結果

  • 利用したサービス:ランサーズ、クラウドワークス、bosyu、Facebook(応募件数が多い順)
  • 利用時期:2020年2月後半から約1ヵ月間
  • 募集形式:プロジェクト(時給計算ではなく案件単位)
  • 採用数:10人(応募総数:25人 非対象者:5人 キャンセルまたはお断り、音信不通:10人)
  • 総メッセージ数:約400通(非採用者等を含むほぼすべて、往復)
  • 採用した人との総メッセージ回数:約16往復/人

進行スケジュール

  1. 募集要項をエージェントと確認、調整
  2. クラウドソーシングサービスで募集開始
  3. 応募者それぞれに概要説明 質問への回答
  4. 日時を設定し、ビデオ(またはオーディオ)ミーティング
  5. 説明の補足、追加資料作成、RFP(提案依頼確認)作成
  6. クライアントとの調整や交渉
  7. 大まかなテーマの提示、調整
  8. 詳細な情報開示
    (公募プロジェクトから、応募者各個人への直接発注プロジェクトに推移)
  9. 別プロジェクト設定・条件更新、正式発注と仮払い手続き テーマや構成に応談
  10. 原稿チェック(初校)、進行管理
  11. 原稿チェック(第2校)、ほぼそのまま納品受け取り
  12. 納品完了、支払い(これ以降はkotobatoで処理)
  13. 編集(文章量調整や用語チェック、誤字脱字チェック、剽窃チェックを含む)
  14. タイトルおよびmeta descriptions、ソーシャルメディア用原稿、挿入PRコピー作成
    フォトストックサービスでヘッダ画像選定と編集 整理して納品

応募者選考の経過

10日ほどの間で、五月雨式に25人からお声掛けいただきましたが、選考したというより、自然に以下のようになっていきました。

まず、真っ先に対象外だったのが5人ほど。残念ながら、まったく文脈を理解できていないのがすぐにわかりました。低質なコンテンツを乱造している、クラウドソーシングの負の側面で、BOT以上の価値がほとんどない人たちです。コピペコンテンツなどが上がってきたら、こちらの手間とリスクが増えるだけです。仮に、条件が違う他の案件を頼んだところで、ろくなものは上がってこないことが容易に想像できるので、即ブロック対象となりました :'(

  • ノウハウやスキルがまったく該当しない
  • キーワードだけで適当に拾って、適当に応募してきただけ
  • メッセージもただのテンプレート
  • 出す実績も、適当なまとめサイト系
  • 質問にも回答しない・できない
  • (水増し可能な)いいね評価だけは高いことも
  • 実名・顔出しなし
  • 各サービスの認証アカウントかどうかはあまり関係ない

次に、そこまで酷くはないものの、条件が合わない人が8名ほど。これらの人たちは、やり取りを複数回繰り返すうちに、お断りする・されるに至りました。

  • 技術的なフィールドがやや対象外
  • ノウハウやスキルが恐らく古い
  • 意思疎通が上手くできそうにない
  • 判断可能な情報が限定的
  • ほぼ実名・顔出しなし

さらに、何回かやり取りをするうちに、フェードアウトする人も数名いました。人にはいろいろな事情があるので仕方ないとはいえ、発注者側からすると、依頼がスタートしていなくてよかったと胸をなで下ろしました。残念ながら、次はあり得ません。

  • 途中から連絡が途絶える

こうして自然に残ったのが10名でした。
当初の予定から大幅に人数が増えてしまいましたが、年度末という納期の都合優先で、管理コストがその分増えてしまうことも覚悟した上で、今回は試しに全員に発注してみることにしました。

クラウドソーシングサービスは、どの程度の信用保証になるのか?

完全ではないにしても、クラウドソーシングサービスが、受発注者双方の信用保証になっていることに、一定の期待はしてもいいとは思います。なので、『あわよくば直接…』のような行為も、規約違反かどうかに関係なく考えませんでした。

そのため、採用した人たちの情報は、別に、ソーシャルメディアで洗い出したりはしませんでした。これは単に、コストとリスクのバランスです。そもそも、そこまで不安を抱く相手に無理に発注するのはメリットがないからです。もちろん、無防備に信用することもありませんでしたが、きちんと意思疎通でき、それなりの質の成果物が、期日内に上げられるかだけを考えました。

もちろん、自分の側も見られていることは常に意識しています。意識はしますが、普段と態度を変えることはあんまりないんですよね、TwitterやTumblrも通常運転でしたし… 😛

クラウドソーシングサービスの、ココが使い辛かった

慣れてないだけといわれればその通りですが、こういうところが分かりにくいと感じました。

  • 1つのプロジェクトに対して、複数の発注先を選ぶのがちょっと手間。特に、公募プロジェクトの募集期間が終了した後、個人宛の直接発注プロジェクトに、交渉の履歴や条件をそのままスムーズに推移する方法がない(メッセージ欄などは、そのまま引き継がれるものの、応募者ごとに個別のプロジェクトにする必要あり)。仮払い手続きの進捗も、横断的に管理できずに分かり辛かった。
  • クラウドソーシングサービスでの受発注契約と、自分が用意するRFPは一部重複したが、前者だけでは不十分。
  • ビデオ・オーディオ会議は、クラウドワークスでは仮発注の後でしか使えない(受発注の前にこそ使いたいのに!)。また、ランサーズのビデオ会議機能は、Chromeでないと動作しない。

結局、クラウドソーシングサービスの、何をメリットにするか?

今回のプロジェクトでは、応募者の皆さんには本当に助けてもらいました。しかも、新型コロナウイルスを巡る動きで先が読めない中で、柔軟に対応いただきました。

ただ、掛かった手間暇とできあがった成果物を全部考えると、残念ながら、プラスマイナスゼロに限りなく近いぐらいです。1人に同じようなタスクを10個依頼するよりも、10人の人たちに1個ずつ依頼する方が、膨大なコミュニケーションコストが掛かります。ただ、これは『こんなことなら、やはり自分で…』とも思いがちなトラップ。依頼先を分散することで納期が短縮できたり、品質の標準化を模索したり、個人差を判断することもまた、リスク管理にもなります。

今後も、クラウドソーシングサービスを定期的に使っていくかどうかは、現時点では未定です。ただ、単なる発注者→受注者だとか、自分の代わりを求めるような関係よりも、自分よりも優秀な人とパートナーシップを組みたいと常に思っていることは変わりないので、必要になればまた利用するかもしれません。


コミュニケーションの解像度を上げるためには?

コミュニケーションをスムーズにし、解像度を上げていくには、優秀な人たちに何回か依頼していくうちに、徐々にコストやストレスが下がっていくことに期待するしかありません。

ただ、どんなに優れたサービスを使おうと、コミュニケーションが上手くできない人はいます。そんな人にしても、たまたま、そういう機嫌や状況だったのか、自分とは反りが合わないだけなのか、タイミングが悪かっただけなのかまでは、分かりようがありません。それに、実はそういうコミュ障気味の人の中に、非常に優秀な人が隠れていたりするものなので、ここが本当に難しいところです。

チャンネルやツール、時間などを変えて、ある程度タッチポイントを増やさなければ、コミュニケーションの解像度は上がりません。しかし、それだけの価値が期待できなければ、そんな手間暇を掛ける余裕はない。この辺りは、鶏と卵の問題であり、永遠のテーマですね。テレワークやリモート会議については、元々感じていたこともあるので、それについてはまた後日。

テレワークやリモート会議のヒントについても、また後日。TwitterやFacebookでもお声掛けいただくと、それなりに喜びます 😀