読書感想文なんて書けない・書きたくない人のための「美術館メソッド」を提唱したい

「メソッド」って言ってみたかっただけです。いや、そうでもないな、本当に役立つし。

今回は、夏休みの宿題でよくある、読書感想文の書き方を紹介します。この考え方は、じゃなく映画音楽ライブイベントでも、仕事のレポートでも役立ちますよ。ただし私自身は、いかにもありがちで退屈な読書感想文は好きではありません。全然、興味がない。作者が感じていたことを勝手に妄想して、それに点数が付いて評価されるなんて、意味がわからない!なので、今回紹介するメソッドが提出先に必ず効くかどうかは保証できないことはご注意を。

AIを使ったサービスを試してみていますが、まだまだ読書感想文やレポートを自動で書くのは難しいようです。徐々に、しかし確実に、劇的に進化するAIの機能への期待はともかく、人の手で書く時のポイントを把握しておくのもオススメです。勘所を把握しておくのは、AIに的確に指示を出すのにも必要ですし、何よりAIに下働きさせられることもありませんからね。

この記事が役立ってくれると嬉しい人

  • 読書感想文という夏休みの宿題を手伝わないとならない保護者の皆さん
  • 読書感想文は本人に書かせたいものの、どう書かせたらいいかわからないおうちの人
  • 読書感想文なんて書きたくないどころか、本なんてあんまり読まないZ世代
  • 本だけでなく、映画やライブのレポートがうまく書けない普通の人々
  • 仕事の報告書にいつもダメ出しされるそこのあなた

私の美術館・博物館の歩き方

私は、美術館や博物館、科学館などへ行くのが好きなんですが、展示作品の見方が、今回紹介する本のレビューの書き方に通じています。なので、まず、これを紹介させてください。

私は、作品を見るとき、必ずしも順番通りには見ません(人気の展覧会だったり、導線設計に意味がある場合はダメですが…)。その部屋に入ったらまず全体を見渡して、自分が興味を持った作品を最初に見に行きますじっくり、いろんな角度や距離から見て、説明があればそれも読む。説明を読んだら、また作品を丁寧に見直す

その後は、人が密集していない作品から、順番はある程度意識しながら行きつ戻りつして見ていきます。気になった作品があれば、他者を邪魔しないように順路を逆戻りして見返すこともあります。最近は、撮影OKな展示物も多いので気が向いたら撮影しますが、その時は、自分の肉眼でちゃんと見ることをいつも以上に意識します。

今回紹介する読書感想文の書き方は、これと同じです。順番通りでなくていいので、自分が一番興味を持ったところを、いろんな角度でじっくり見てみる。行ったり戻ったりしても構わない。先に解説文をちゃんと読んでしまうと、その見方に吸い寄せられたり制限されるのでほどほどに。そして、気になったところは、自分というカメラでメモしておくわけです。後は、その材料を組み立てていくだけ。

この記事が想定しているコンテンツの種類

  • 一般の本(小説やエッセイ、詩、絵本、写真集などは、注意あり)
  • 映画
  • 音楽
  • ライブイベントなど

読書感想文を書く前の準備

1.前書きを読んで、印象に残った部分をメモする。
2.帯があるならそれも読んで、印象に残った部分をメモする(図書館の本は無理)。
3.目次を読んで、気になった項目をいくつか選ぶ(これをいくつ選ぶかで、全体の文章量を調整)。
4.項目のタイトルから、どんなことが書かれているのか、想像してみてメモしておく。
5.内容を読んで、自分が想像したことと何が同じ・違うか意識して確認する。
6.発見したり驚いた、納得した、面白く感じた、違和感を持った、疑問を抱いたことなどをメモしておく。
7.後書きも読んで、印象に残った部分をメモする。
8.翻訳本だと訳者の後書きがある場合も多いので、もしあればそれも読んで、印象に残った部分をメモする。

本の文章をメモする時は、元の文章そのままでなくても構いません。むしろ、自分なりの言葉遣いに微妙に変えた方がいいです。なので、スクリーンショットは意味なし。ただ、本の文章を引用する場合は、正確に抜き出す必要があります(紙ならページ数が指定できますが、電子書籍はそうもいかないものの、コピー&ペーストが楽)。

目次からいくつ選ぶかでも、文章全体の文字数を調整できます。コンパクトにまとめたかったら1〜3つ、全体をバランスよく俯瞰するなら、5つとか。複数を選んでも、それぞれに関係あるテーマだったりするはずなので、いくつかの塊にまとめてみたり、つながりの順番を意識するのは有効です。つまみ食いして読みながら、もし興味が湧いてきたら、他の部分も読んでみればいいでしょう。最初から通しで読み直すと、つながりがわかって新しい発見もあるかもしれません。

なお、この準備のステップは、小説やエッセイ、詩、絵本、写真集などの文芸作品の場合は、必ずしもこの読み方が通用しません。前書きがなかったり、章立てがあっても「第一章」「第二章」など、ただのナンバリングなこともあります。絵本なら、目次がないことすら。この場合は、最初から最後までを通読するしかありません。例えば、短編集や詩ならいくつか気に入った作品を選びやすいように思えますが、限定的な文章を元に自分で新しく文章を書くのは、かなりの力量が必要です。

実際に、「美術館メソッド」で読書感想文を書いていこう

美術館メソッドで読書感想文を書くなら、例えばこういう流れができそうです。2,500文字の仕上がりを想定して、ざっくりした計算もしながら書く場合を例に考えてみます。

  1. まず、自分が一番強く感じたこと・印象に残ったことを100文字ぐらいでメモしておく(喋って音声メモも有効)。ポジティブなことでなくていいし、作者の気持ちを勝手に妄想しなくてOKメモは文章が仕上がるまで捨てない
  2. 目次から3つ選んだなら(これをいくつ選ぶかで、全体の文章量を調整)、それぞれ50文字ぐらいでメモしておく。
  3. 本の概要と著者について、100文字ぐらいでメモしておく(ただし、コレは注意が必要なので後述)。
  4. ここまでで350文字。
自分が一番強く感じたこと・印象に残ったこと 100文字
項目1 50文字
項目2 50文字
項目3 50文字
本の概要と著者について 100文字
  1. 後はこれにバランスよく肉付けしていく。
    まず、自分自身にインタビューするつもりで、なぜ、そのように一番強く感じたのか?何が印象に残ったのか?そう感じるに至るエピソードがあるか?などを聞きながら、文章を足していく。400文字を目安。
  2. 次に、目次から選んだ3つの内容も、それぞれ本を読んで膨らましていく自分が一番強く感じたことにつながっている・つなげられるとベスト。つながっていなかったら、別の項目を選び直すのもアリ。各200文字を目安。
  3. 本の概要と著者についても、各200文字を目安に編集する。
  4. これで1,400文字。構成を調整する。
自分が一番強く感じたこと 400文字
著者について 200文字
本の概要 200文字
項目1 200文字
項目2 200文字
項目3 200文字
  1. さらにそれぞれ文章を足しながら、全体構成とストーリーの流れを調整する。項目の順番は、本の構成通りになっていなくていいので、入れ替えてOK。「自分が一番強く感じたこと」は、音楽でいう「サビアタマ」にして、一番最初に短く要点をまとめて先出しする。そして、本の項目から拾った内容についての話を経て、最後にもう一度、今度はたっぷり目にリフレイン。これで2,900文字(敢えて、途中までは規定の文字数をオーバーさせておく)。
自分が一番強く感じたこと1 400文字
著者について 300文字
本の概要 350文字
項目1 350文字
項目2 350文字
項目3 350文字
自分が一番強く感じたこと2 800文字
  1. これを2,500文字まで削って、質を上げながら仕上げていく。全体をいくつかの段落に分けたい場合は、見出しを付けるのもあり。
自分が一番強く感じたこと1 300文字
著者について 300文字
本の概要 300文字
項目1 300文字
項目2 300文字
項目3 300文字
自分が一番強く感じたこと2 700文字
  1. 最後に、この文章にタイトルを付ける。最初にタイトルを付けていたら、自分が読者になって文章を読んで付け直す。
    美術展覧会なら「XXX作品展」でもいいが、この文章で「XXXを読んで」とか「XXX読書感想文」はダメ、最低。美術展の公式ページやポスターに大きく表示されるキャッチコピーや、読んだ本に新しい帯を付けるイメージで!

公式サイトやECサイトの紹介、他者のレビューは諸刃の剣

本そのものや作者、他の作品などについて調べることも必要です。著者のプロフィールや作品が書かれた時期、他の作品とのラインナップを俯瞰的に見て、社会情勢や時代背景、著者の経験が、作品にどう反映されているかを知ることは、深い理解のためにはとても有効です。

ただ、どうしても書評が目について、それをコピー&ペーストしたくなったり、強く影響されてしまうことがあります。Wikipediaしかり。なので、すべて使い方は諸刃の剣です。自分が書いた文章に添えるスパイスとして、必要最小限に留めるのがいいでしょう。

ちなみに、今はコピペを検出するサービス=剽窃チェッカーがいろいろあります。私も、クライアントから依頼されるかどうかに関わらず、自分が書いた文章は必ずこの剽窃チェッカーを通して納品します。バレて困るようなことは止めておく、というか、自分で書いた文章を誰かに読んでもらうのがやっぱり楽しい!


相手が望んでいるだろうことを想像して、受け入れやすい情報を、受け取りやすい形で提供するのは、社会で必要なスキルの一つ。ただし、その中にしれっと自分なりの視点を混ぜておくこと。これは、空気を読むとか忖度とは似て非なるコミュニケーション術です。

知ってしまったが最後、それまでとは違う考え方になることで、ほんの少しだけでも傷ついてしまうのが、アートの真髄だと思います。退屈な読書感想文も、自分で利用することができますよ。ホットな夏はまだまだ終わらない 😉