
ビデオファイルの変換ユーティリティーとして、FFmpegのフロントエンドとして動作するff·Worksを紹介しました。macOSが標準ではサポートしていない、wmv/avi/mkvなどのコーデック(圧縮方式)のファイルも扱えて、シンプル操作で変換できます。
実はほぼ同期に、同じ目的のユーティリティーMovavi Video Converterを知りました。少し試したところ、これが今までいくつも試してきたコンバーターの中で、一番使いやすいのです!しかも、機能も十分な上に、価格もリーズナブル。macOS/Windowsのクロスプラットフォーム。
困った…悩ましい…複雑な感情のマトリョーシカ状態。素直にハラショーと叫べない…結局、購入しましたが、そのモヤる理由も交えて紹介。
[追記 21/06/01]だって、通常のアップデートと紛らわしい方法で、さらなる有料の別アプリを押しつけてくるんだもの 🙁
ビデオ変換で徹底的に楽をしたい!
そもそも、なぜあれこれビデオユーティリティーを物色しているかというと、とにかく簡単にビデオ編集したいんです。わざわざ専用の重たいアプリケーションAfter EffectsやPremiere Pro/Premiere Rushなどを使わなくても(もしくは使う前の下処理で)、macOSが標準でサポートしていないフォーマットを変換したり、一部を切り抜き(クロップ)したり、前後をカット(トリミング)をやりたい。複数ファイルを登録して設定すれば、後はバッチ処理で楽をしたいわけです。
で、いろいろなニーズを全部解決してくれる決定的なツールはないんですが、しつこく探していると、そのヒントになる情報にアクセスもしやすくなって、見つけて今に至る、と。
Movavi Video Converterはこんなユーティリティー
- ビデオ/オーディオファイルのコンバーター。macOS/Windowsのマルチプラットフォーム対応。Mac OS X Yosemite 10.10以上/Windows 7以上。
- 180種類以上の、幅広いビデオ/オーディオフォーマットに対応。
- デバイスのプリセットも、スマホやパソコン、テレビ、ゲーム機など200種類以上。パソコンにデバイスが接続されていると認識し、それに最適化するプロファイルに自動変更も可能。
- ビデオは、手ブレ補正やフィルタ、回転、クロップ、トリミングなどの編集が可能。キャプションや透かしの追加、画質の向上処理も。
- ビットレートやサンプリングレート、VBRなど、細かくカスタマイズ可能。
- 複数ファイルのバッチ処理にも対応。
- ハードウェアアクセラレーションとマルチコアプロセッサに対応した、SuperSpeedテクノロジーで、高速変換。
- ライセンスは買い切りで$49.95/1台(本社サイトでのみ)。他にも、1年のサブスクリプションやビジネスライセンスあり。
Movavi Video Converterの使い方
いろいろ不安はありつつ、使ってみました。操作は本当にシンプルで直感的。何となく触ってるだけで、ちゃんと使えます。変な日本語のローカライズもなし。
- Movavi Video Converterをダウンロードし、インストールする。
- アプリケーションや、ビデオ/オーディオの初期設定は、必要に応じて確認する。念のため、自分の情報を開発に送信しないように設定変更。
- 操作は超シンプル。変換したい複数のビデオファイルをドラッグ&ドロップする。順番はドラッグで並べ替え可能。
- ファイルには、個別にビデオ/オーディオそれぞれの設定が可能なので、必要に応じて設定。ビデオなら、スタビライザーによる手ぶれ補正やエフェクト、クロップ(画面サイズの切り取り)、トリミング(時間の切り取り)が可能。
- ウインドウ下に表示されるプリセットから、変換に使いたい設定を選ぶ。細かくカスタマイズして、残しておくことも可能。
- 設定がすべて終わったら、ウインドウ右下の[変換]ボタンをクリックする。
- 複数のファイルを結合するには、すぐ左にある[ファイルを結合]トグルボタンを切り替える。元のビデオファイルによっては、設定の調整が必要。
- 処理の経過は、メニューバーのアイコンに小さく、縦型のプログレッシブバーで表示される。Dockに畳むことで負荷を低減できるが、Dockアイコンをクリックしても、ウインドウは表示できない(メニューバーのアイコンから選択)。処理が終われば、チャイムが鳴ってウインドウが自動表示される。
Movavi Video Converterを使うと幸せになれる人
- macOS/Windowsの両方またはどちらかで、ビデオを編集するプロフェッショナル。
- After EffectsやPremiere Pro、旧Final Cut ProやX、DaVinci Resolveユーザー。
- ビデオ編集のプロだけに限らず、ビギナーやハイアマチュアも使える。
- GUIでシンプルに操作したい人。
- FFmpegユーザー。
Movavi Video Converterのココがいい!
- 直感的で非常に使いやすいUI。
- ビデオのトリミングが、前後のカットだけでなく、任意の範囲を削除して、複数箇所でも中抜きできる。
- いろいろなキャプション(テロップ)にも対応。
- ビデオやオーディオの結合(マージ)も楽。
Movavi Video Converterのここは要注意
- App Storeの評価が微妙。InstagramやUSオフィスのGoogleマップのくちコミでの評価は今ひとつ。『使えなくて返金を要求しているのに、まったく対応しない』『ライセンスを買ったのに、ウォーターマークが消えない』など。一方、Facebookページのコメントが大人しいのが気になる。
- 開発・販売しているMovavi Software Inc.という企業は、2004年創業のロシア企業。アメリカ セントルイスとロシア、キプロスにオフィスがあるが、恐らく本社はノヴォシビルスク。
- PhotoshopやPDF、Excelファイルなど、開けないファイルも一旦登録できてしまう(登録して「開けません」表示が出る)。
- オーディオは、チャンネルごとに編集できるような機能はない(変換できるので十分といえばそうだが、ビデオに比べるとちと貧弱)。
- オーディオあり/なしのビデオを、1つのビデオファイルとしてマージしようとすると、オーディオがないことを警告するアラートが表示されて処理できない。ダミーの無音を登録して回避するしかない。
- rawファイルは、登録できてエラーも表示されないが、5秒のビデオクリップとして認識され、プレビューしようとするとアプリケーションがフリーズする(今のところ再現性あり)。
- 登録したファイルは、deleteキーでは削除できない(マウスの右クリックで「削除」)。
- ライセンスは、本社サイトで日本円で買うと6,500円+消費税で割高。Mac App Storeだと、買い切りはなく、さらに割高に(¥3,060の年間サブスクリプション他)。
使いやすさと不安とのバランスを取りながら
ff·Worksを紹介した時も、『ユーティリティー系は、罠がいっぱいでハイリスク!』と書いていました。プライベートブラウズでいろいろな情報をチェック。
Movavi Software社は、LinkedInで見つかる従業員も、ほぼロシア系。同社は、App StoreやMac App Storeにもいくつかアプリをリリースしていますが、評価はバラバラ。もちろん、ロシア製アプリがダメだとはいいませんが、FaceAppの件がどうしても気になるんですよ。
Webサイトとアプリケーションの両方で、表示言語に日本語が選べるユーティリティーはなかなかありません。Webサイトは、テキストだけでなく写真も日本向けにスイッチするほど(他のアジア系言語や、ヒスパニックではここまでない様子)。ちょっとしたあざとさも感じないわけではないですが、そんなに力入れるほどのマーケットかな…?
一応、インストーラーを使わずにパッケージファイルをこじ開けてコピー。起動しても、過度で不要なファイルアクセス要求もなさそうです。まだ試用段階ですが、今のところ、怪しいログの取得や送信も不明。
セキュアチェックのサービスVIRUSTOTALで確認してみました。余計な広告をプッシュして悪さをするアドウェアを示す、Trojan-Downloader.OSX.Adloadなる警告は表示されましたが、Undetected(未検出)。これが本当に、アドウェアなのか、ライセンス認証のチェックなのかは不明ですが、留意しておく必要はありそうです。
効率化マインドを持った、ツールハンティングに終わりはない
ビデオ変換ユーティリティーに限らず、テキストエディターでも、ソーシャルメディアのマネージメントでも。こういうちょっとしたユーティリティーって、あれば便利ですが、ないと結構困るんです。仕事の合間で必死に探すしかありません。ツール探しが目的化しない範囲で、きちんとペイする可能性があるなら、目の前の試行錯誤は必要なプロセスですからね。
そもそもこれは、個人のマインドやワークスタイルに関係するテーマですが、私は『できる効率化はどんどんやりたい』派です。自動化できるなら積極的にやりたいし、無駄な作業は繰り返したくない、『XXさんじゃないとできない・わからない』ブラックボックスは、できるだけなくしたい。そうやって確保できたリソースを、一番貴重な「人」に集中させたいんです。
また、今後、AppleはMacのCPUを自社製チップ「Appleシリコン」に移行していくことが確定しています。作業を楽にしてくれ、将来に渡って使える信頼できるツールは、日頃から地味に探し続けておく必要があります。
Movavi Video Converterは、正直、全幅の信頼でオススメできるかというと、まだ微妙なところです(しかし、人柱として購入)。長時間のビデオ変換など、実際の仕事にはまだ使っていませんからね。ff·Worksよりも先に見つけていたら、こっちに飛びついていたか…というとそんなことはないかな。今のところ、信頼でいえばオープンソースソフトウェアベースのff·Works、使いやすさでいえばMovavi Video Converterといったところ。
ただ、今までいくつも試してきたコンバーターの中で、最も使いやすいのは認めざるを得ません。また、不安はあるとはいえ、実は組織と人の顔が一番見えるサービスかもしれません。次のOS、macOS Big Sur 11.0では、さらにセキュリティーが強化されるので、怪しい動きは一層厳しく監視されるでしょうし、Movavi Video Converterも、しばらくはユーザーの評価などをチェックしつつ、注目しておきたいと思います。
『使ったことある』『こっちの方がもっといい』という情報があれば、ぜひソーシャルネットワークやコメントで教えてください 😉