知って即ダウンロードしましたが、テーマがあまりにもタイムリー過ぎました。この本を読み進めるうちに、公文書偽造や隠蔽問題、日大アメフト部の事件が次々と起こったからです。それらはほぼすべて、この本に書かれている「謝罪でやってはいけないこと」が丁寧に実践されていました。無料の危機管理教材化する現実、あまりにもすごすぎる!

お笑いの吉本で鍛えられた謝罪センス
著者の竹中功さんは、元吉本興業。確かに、芸能情報に関心がない私でも、所属芸人さんたちがたびたび謝罪に追い込まれていた気はします。謝罪という緊張はある意味、笑いがもたらす幸福の対極です。巨大エンターテインメント企業のリスク管理と、その先のそもそも謝罪しなくていい組織作りに、とても興味が湧きました。
お笑いテイストが適度に散りばめられてはいますが、もちろん、ここで紹介されている内容がすべてなはずがありません。優先順位や社内体制、平時の教育、記者会見の運営、シナリオのテンプレートなど、非常に具体的で参考になる内容に溢れていました。想像を絶する数々の修羅場からのエッセンスなのだと感じました。もうこんなの、特殊部隊のマニュアルですから!
第1に、有事に際して真剣に対処する「精鋭」だけを集める。 第2に、「要らぬことを言う者」に事態を混乱させない。 第3に、まだどのように有事に対処するか決めきらないうちに、外部に状況をリークをする「スパイ」の活動を阻止する。
ソーシャルメディア管理にも
この本には、ソーシャルメディアの管理に重要なヒントが溢れています。炎上対策やぎりぎり炎上させない火加減については、具体的に説明されているわけではありません。しかし、対話と傾聴、説明責任、コミュニティーにおける信頼など、どれもが共通しています。サービスやテクノロジーのノウハウも重要ですが、人間は感情で動く動物。コミュニティーマネージャーや広報関係の方には、強くお勧めしたい内容です。このままテンプレート化して、GitHubにアップしてもいいかも。
1.命や身体にかかわることがないかを確認 2.経緯・事態を時系列で整理して完全に把握 3.「謝罪シナリオ」を書く 4.原因を究明し、再発防止策をまとめる 5.直接の被害者に、直接謝罪に行く 6.必要であれば、対外的に発表
きちんと謝れるかどうかという判断基準
人間の本性なんて、なかなか判断できないもの。それでも、私が最近、ある程度有効だと感じているのは、『申し訳ありません』という言葉と態度を素直に伝えられる人物かどうかです。しかるべき時にすぐに、適切な方法で、自分自身の言葉として、生きたメッセージとして、真摯に伝えようとしているか。組織の肩書きや、SNSでの言動では誤魔化し切れない、本音がはっきりとわかります。
実は、この本は、自分のインナーチャイルドの相手をする教科書にもなると期待しました。なかなか素直に謝ることができなかった・今もできていないだろう自分の、上手なあやし方。これは、読み進めるのが正直、辛いところでした。『あれはちょっとまずかった、酷かった、最悪だった…』『お前が言うか!』…いろいろな暗い過去が甦りながら、身悶えして読みました。
敢えてもう一ついうと、取引先や知人だった人たちの態度や行動心理を、少し振り返ってみるのもいいかと思ったのです。なるほど、『人の常識とは、18歳までに集めた偏見のコレクション』だという現実を思い出します。それまでいくら続いていようが、縁の期限というのはあるものなのですね。
もちろん、この優れた謝罪マニュアルが必要にならないことが理想なのですが、安全についての格言を思い返しました。まさにこれそのもの。「平和」と「軍事」に入れ替えて、そのまま説明できますね。
安全とは 1.安全とは、危険を考えることである。 2.そもそも安全は存在しない。本来存在するのは、危険である。 3.安全な状態とは、危険を除去または制御し、その対策機能が維持されている特殊な状態である。
と思っていたらタイミングよく、竹中さんが今週6月2日(土)の『久米宏 ラジオなんですけど』にゲスト出演されるとのこと!これは楽しみです。