Adobe Acrobatで、証明書による署名機能がなぜか急に使えなくなってしまっていたんですが、一応、それが解決した(はずな)ので記録としてメモしておきます。
Tipsといいながら、これが解決策だ!ということをハッキリ示すまでには至らないので、忸怩たる思いは残っています。また、最新バージョンでは問題がすんなり解決されている可能性も高いです。それでも、経緯を公開しておきましょう。
Adobe Acrobat(Adobe Acrobat Pro Document Cloud)には、「証明書」機能があります。これは電子証明の一つですが、印影のような「スタンプ」機能や、手書きや書体を使った「電子署名」とは違います。「証明書」は、単なる視覚的な情報だけではなく、証明者や日付、有効期限などと共に、そのPDFが改ざんされていないことを証明するセキュアな情報が入っています。使い方も簡単ですし、追加コストも掛からないので、私は重要なPDFを他者に共有する時には必ず使っています。
ところが先日、この機能が突然使えなくなってしまいました。ツールバーのボタンはちゃんと動作して、PDFの上に配置するマーカーもドラッグできるんですが、その次のステップである証明書を選択するオーバーレイが表示されないんです。
Acrobatでどんなトラブルが起きていたのか?
症状
- Adobe Acrobat Pro DCで証明書ツールが使えない。署名したいPDFファイル上で、証明書ツールのマーカーをドラッグしても、証明書を選択するオーバーレイが開かない。
証明書の登録を一旦解除して、再設定してもダメ。再現性あり。 - 署名したいPDFファイルは、Dropboxフォルダの中にある。
環境
- Adobe Acrobat DC 22.022.20191(最新は22.022.20212)
- macOS Monterey 12.5.1(最新は12.6)
- Dropbox for macOS 154.4.5363(最新は158.3.4496)
- Apple Silicon/Intel関係なし
解決策
- Dropboxアプリケーションを最新にアップデートする(基本は自動更新)。
- macOSも最新にアップデートする。
- 対象のPDFを、一旦、Dropboxフォルダの外に移動させて編集する。
- 関連するAcrobatの初期設定を退避して証明書を再設定する場合は、元の証明書は捨てない【超重要】。
原因
不明
(推測:署名するのに十分な情報が、オフラインに同期されていないため?)
Dropboxの外で一旦更新する手順
今回のトラブルにDropboxが関係しているのかははっきりしませんが、その可能性はかなり高いと感じています。また、Dropbox以外のクラウドサービスでも、同様の症状は起きる気がします。
公式サイトでは『macOS 12.3では、オンラインのみのファイルはサイズが 0 バイトで表示されます。』と明示されていますが、今回のトラブルに遭遇した時のmacOS 12.5でも、ファイルサイズは0で表示されていたように記憶しています。そのため、最新版のmacOSとDropboxアプリケーションの組み合わせでは、もう解決されているかもしれません。
Acrobatの証明書機能を確実に使えるようにする私のオススメは、一旦、Dropboxの影響を受けない状態でPDFを更新して署名することです。手順は簡単ですが、途中で確認するポイントがいくつかあります。
- 署名したいPDFファイルを確認する。Dropboxフォルダの中にあり、一定期間使っていなければ「スマートシンク」が働いて、macOSやDropboxアプリケーションのバージョンによっては、ファイルサイズが0 byteになっている可能性がある。この場合、Quick Lookでプレビューは表示できない。
- PDFファイルがDropboxで「オンラインのみにする」になっている場合、Acrobatで開こうとするとエラーが表示される。本来なら、オフラインに自動同期されて開いてほしいが、Dropboxアプリケーションが現在βテスト中。なお、このエラーはPremiere ProやAfter Effectsなど、外部ファイルを参照するアプリケーションでも起きることが警告中。
- PDFファイルを、一旦、Dropboxフォルダの外に移動させる。ファイルをオフラインでも使える状態にするには、Finderでファイルを右クリックして表示されるメニューから「オフラインアクセスを許可」を選ぶこともできるが、Dropboxの影響を確実に受けないように、一旦、外に出す。
- Dropboxフォルダ内のファイルやフォルダには、同期状況を示す同期アイコンが表示されるが、アップデートされないことがあるため、これもあてにしない。
- メニューバーの同期アイコンがアニメートする。アイコンをプレスして表示される「同期履歴」「アクティビティ」で、PDFファイルの同期が確実に更新されたことを確認する。
- PDFファイルを選択し、Finderの「情報を見る」で、ファイルサイズが0 byteではないことを確認する。
- AcrobatでPDFファイルを開く。可能なら、ファイル情報に一文字入れるだけでもいいので、更新して保存する。
- 何も問題がなければ、証明書ツールで任意の範囲をマーカーで囲むと、通常通り、デジタルIDの選択ウインドウがオーバーレイ表示される(後述)。
- 署名が完了したら、Dropboxの任意の場所に戻して同期を確認する。
Acrobatで一部の初期設定を一旦退避させ、環境を再設定する手順
DropboxとmacOSのバージョンの影響による可能性が高いと知った後から考えれば、以下は必要ないはずです。ただ、今回の一連の操作で最初にやってみたことなので、Acrobatの初期設定についても一応残しておきます。
Acrobatの初期設定のリセットについては、公式サイトのサポートコミュニティーに関連情報がありました。ただ、内容がちょっと古いので、自分の環境なりに適当に解釈しました(これはこれでちょっとリスク)。以下で説明しているのは、macOSの場合ですが、Windowsでも公式情報を参考にしてみてください。
- Acrobatが起動していたら終了する。
- 以下のファイルやフォルダを退避させる。
~/ライブラリ/Preferences com.adobe.acrobat_webcapture.plist com.adobe.Acrobat.Pro.plist com.adobe.distillerDC.plist /Adobe/Acrobat
- ここで重要なのは、証明書を含む以下のフォルダは削除せずに、そのままにしておくこと。
~/Library/Application Support/Adobe/Acrobat/
- Acrobatを再起動し、「環境設定」-「署名」-「IDと信頼済み証明書」を再設定する。[詳細…]ボタンをクリックする。
- ウインドウ左上のボタンで証明書を[追加]する。
- 「既存のデジタルIDを次の場所から選択:ファイル」ラジオボタンを選んで、[次へ]ボタンをクリックする。
- [参照]ボタンをクリックし、証明書ファイルを指定する。
- 「Security」フォルダが開くので、証明書ファイルを選んで[開く]ボタンをクリックし、デジタルIDの追加を[完了]する。
~/Library/Application Support/Adobe/Acrobat/DC/Security
解決できたか、Acrobatの証明書ツールをテスト
- PDFファイルを開き、証明書ツールで任意の範囲をマーカーで囲む(一部の初期設定をリセットしても、ツールバーのカスタマイズはそのまま残っているはず)。
- 今度こそ、デジタルIDの選択ウインドウがオーバーレイ表示されるはず!証明書を選び、[続行]ボタンをクリックする。
- 証明書の表示方法を設定し、パスワードを入力して[署名]ボタンをクリックする。
- ウインドウ上部に表示されるバーで、署名が有効なことを確認する。
解決の手順がわかってしまえばいつも通り、操作そのものは何てことはないんですけどね。ただ、今回は原因がハッキリしないので、解決策も暫定ではあります。
こういうトラブルの場合、問題がAcrobatにあるのか、Dropboxなのか、それともmacOSなのかの切り分けが非常に難しいのが厄介です。複合的な要因だと、どこの公式サイトにも十分な情報がありません。せいぜい、ユーザーがフォーラムに書き込んでいることがある程度ですが、そこに辿り着くのもなかなか大変だったりします。
Adobeアプリケーションの初期設定ついでに補足しておくと、初期設定やキャッシュファイルは、バージョンナンバーごとに作られ、すべて残ってしまいます。なので、もう使っていない古いアプリケーションの初期設定やキャッシュファイルは手動で削除するのがオススメ。ただし、よい子はちゃんと、管理者の指示に従ってね!