丼ご飯とリノベーションまちづくり

先日、北九州市小倉で「リノベーションまちづくり視察」に参加しました。古い物件を通じた新しい価値の創造と町づくりを手がけている、北九州家守舎さんのイベントです。物件をじっくり見るあまり、肝心の写真が少なめなのは、次の訪問チャンスということで。

北九州家守舎
http://www.yamorisha.com/

そもそも北九州市って

いつもありがとうソニック

残念ながら北九州市は、2018年まで4年連続で人口流出数が日本一。私が視察に参加した週末は『わっしょい百万夏まつり』が開催されましたが、今や人口は95万人を切っています。スペースワールドも閉園してしまいました。
一方、北九州地区に古い町並みが残っているのは、第二次世界大戦で大規模な空襲を受けなかったおかげ。73年前の8月9日は、小倉上空が雲で覆われていたため、B29は長崎市大浦へ向かいました。勝山公園には平和祈念碑があり、毎年慰霊祭が開かれています。
このイベントは、古い物件のリノベーションと町づくりについてのセミナーと、小倉中心部の物件の視察で構成されていて、毎月第1金曜日の開催。博多〜小倉間は、新幹線でわずか20分弱なんですが、今まで、小倉は中心部を歩いたことが何度かあるだけでした。何も知らずに通っていた町のことを、少しでも別の視点で見てみようと思った次第です。

それぞれみんなが考える「町のため」

人口流出日本一の地方都市としての課題

セミナーでは、現場のいろいろな話を聞くことができました。
まず、2010年の小倉家守構想を発端に、外部のコンサルタントの知恵を借りてスタート。偶然のタイミングで、行政と不動産オーナー、そして大学を、上手くつなぐことができたそうで、それが地域に大きなプラスの影響を及ぼしてきたようです。下準備から数えれば、5か年計画が2周りというそろそろ10年目とのこと。
具体的な考え方や施策も、今、話で聞くだけでは当然かもと思うところですが、いろいろな苦労があったのだろうと想像できます。
ある物件では、オーナーが希望したがる、大きな区画をまとめて貸し出すのではなく、いくつもの小さな区画に分割。入居者が払える家賃で場所を設定し、テナントが決まってから、工事に着工。しかも、その入居者も知り合いの伝手繋がりで募集することで、自然な自分たちのコミュニティー作りにもつながっているとのことでした。
また、商店街では、意思決定を早める株式会社を設立し、『町のため』と古い商店主が取締役に就任。古い町が残っていることで、昔からのつながりが残っていることや、物件オーナーの入れ替わりが激しくないこと、地元のことを本当に考えている人たちが多いらしいのです。
中心部の魚町サンロード商店街は、地方の商店街にしては珍しいほど人通りが多いのです。明るくなっている1本東側の通りは、古いアーケードを取り外したとのこと。国家戦略特区に指定されたことで、条件付きながら、通りの上でいろいろな形の商売やイベントが可能になりました。通りでは結婚式まで開かれ、レッドカーペットまで敷かれたそうです。すごい!

3者それぞれの立場で持続的に

事業者はあくまでも市民であって、都心経営の視点で運営して、ビジネスとして稼いで税金を収めることが求められます。物件のオーナーしかり、物件を借りたい商店主しかり。補助金無しでも、持続的に商売を回していくことが必要になります。
一方の行政には、戦略的な都市政策を推進することに専念してもらいます。必要に応じて、政策策定と規制緩和で市民を支援してもらって、余計な口出しはせずにいただきます。
そして、事業推進民間事業者である家守会社が、その仲立ちをするわけです。リノベーションスクールという、かなり本格的な学習と実践の仕組みを全国初で開催し、今や全国ネットワークになっているとのことでした。なるほど。

リノベーションスクール
http://kitakyu.renovationschool.net/

ちょっと「ブラコクラ」

実は、今回の視察ツアーで紹介された物件の中には、以前、何となく気になって訪れたことがある場所もいくつかありました。「cafe causa」の2Fには会合で何度か行っていましたし、「メルカート三番街」の「cafe CACTUS」にも入ったことがあり、「TangaTable」にも泊まったことがありました。何も知らなくても、誘われていたんでしょうかね。

グリーンがアクセントのcafe CACTUS

cafe causa
http://www.causa.jp/

メルカート三番街
http://www.mercato3.com/

cafe CACTUS
http://www.cafe-cactus.jp/

TangaTable
http://tangatable.jp/

TangaTableに朝日が

初めて行ってみたのは、コワーキングスペース2か所。商店街の中にある秘密基地は、よくパーティーやイベントも開かれているようで、当日も夜の飲み会に参加してみただけでなく、翌日もまた戻ってみました。すぐ近くの「みかげ通り」にあるMIKAGE1881も、窓からの見晴らしと赤いソファーが印象的な、なかなかステキなところでした。

秘密基地
https://coworking802.com/

MIKAGE1881
http://www.mikage1881.jp/

旦過市場がインバウンド人気なのは

その名の通り、大学が運営する食堂
托鉢のように路地を彷徨う

さて、視察とは直接関係ないんですが、やっと日中に旦過市場(たんがいちば)を訪れることができました。そして、商店街の真ん中で北九州大学の学生さんたちが運営する、「大学堂」名物の「大学丼」を味わうというより、体験しました。
これは、白ご飯だけをよそってもらった丼を手に、市場をあちこちうろついては、自分のオリジナル丼を作って食べられるという、夢のような仕組み!刺身と、北九州名物である鰯のぬか炊き(糠味噌の煮魚)はすぐ決まったものの、丼片手に人混みの市場内をまんまとあちこち彷徨ってしまいました。昼から素面でうっかり手に取ってしまった豚足を食べるのも、初めての経験でした。

この大学堂も、何と営業10周年。店の学生さんたちに聞けば、来店するほとんどが、アジアのインバウンド観光客とのこと(私は、辛うじて日本語で話しかけてもらえました…)。確かに、ベビーカーを押した家族連れや女子旅らしい一団が本当に目に付きました。福岡よりもさらに近くて安い、週末に気軽に遊びに来られる観光地なのだそう。そのきっかけが、やはりSNS。

丼ご飯を片手に考えた

昭和映画のセットまんま

これもまた偶然なんでしょうが、日本にソーシャルメディア、特にSNSが普及し始めたのが、ちょうど2008年辺りから。町づくりと同じで、コミュニティーがパワーを示すタイミングの一致も興味深いと感じました。リアルな場とコミュニティー、信頼感の醸成といった点が通じているのかもしれません。

写っているものすべてがほぼ茶色

非常に印象的だったのは、表に見えないところの足固めを、実直かつ柔軟に、賢く準備されていたのだろうと感じたところです。恐らく多数いるはずの、町の重鎮やうるさ方を懐柔する、硬軟取り混ぜた手練手管は、セミナーや町歩きしたぐらいではとても真似できるはずもありません。基礎さえしっかりしていれば、後の建て付けに少々不具合があろうと、何とか上手く調整できるという見本だったかもしれません。もちろん、必ずしもすべてが上手くいっているわけではなさそうだったんですが、ローカルでニッチ、マイクロなところを大切にしながら、自立した、継続性あるプロジェクトを垣間見ることができました。

表に見えるいろいろな具を支える、見えない丼のご飯。地域に残る古い建物を核とした温故知新、人々の信頼関係がつなぐシェア。いろいろご馳走様でした。