卒業の時期に、死と新たな再生へ向けた旅立ちを考える 3つのストーリー

毎年この時期になると思い出す、3つの卒業式エピソードがあります。どれもそれなりに知られたものばかりですが、卒業や人事異動からほど遠い自分だからこそ、ひとつの節目として見たり読み返している気がします。

別れと旅立ち、冬から春、そして死と再生。学生にも、学生だった人たちにも関係する、心に深く響くストーリーとしてご紹介します。

点と点、愛と絶望、死と再生、小賢しくならず貪欲に

欧米の大学は、卒業式が初夏。2005年6月12日の、S.ジョブス伝説のスピーチです。病気と手術を経て復活し、『死に最も近い体験をしたが、もう10年はこんな思いはしたくない』と語っていた彼も、残念ながらこの6年後に亡くなりました。強烈な個性をビジョンを持っていた彼が惹かれていた、禅や東洋思想を感じさせる死生観が語られていました。

「正しさ」に惑わされず、失われた希望の果てへ

作家の高橋源一郎氏が教鞭を執る明治学院大学の卒業生へ向けた、ツイートによる式辞です。東日本大震災が起きた翌日が卒業式だった彼らは、式を迎えることができませんでした。現実を直視する厳しさと、人生の先人としての覚悟を感じさせました。一連のツイートは、今も直接見ることもできます。また、『「あの日」からぼくが考えている「正しさ」について』という書籍にも纏められています。

「海を見る自由」のために、鎮魂の喪章を胸に白い帆を上げよ

これも2011年3月の、卒業式の式辞です。埼玉県新座市にある高校の校長先生による、魂が込められたメッセージは、当時大きな話題になりました。何と重たく、過酷な自由でしょうか。それでも、この血が滲むような言葉で送り出してもらえた当時の学生は、本当に幸せだったと思います。この2年後にも、『何も持たずに、2時間海を見つめよ』という力強い式辞が送られました。


自分が学生の頃には分かりませんでしたが、どんなに絶望的で過酷な状況であっても、若い人たちの旅立ちは、常に希望に満ちあふれているのだと感じました。死を超えてなお希望があって欲しいという、静かな怒りにも似た力強い願いが、旅立つ人たちを優しく見守っていきます。

さて、元学生はこの春、どんな希望を見つけましょうか?