夜中の新宿で盗まれたiPhoneを取り戻した後の話

10日経った今だから、こうしてエントリーを公開する余裕はありますが、生きた心地がしない事件でした。
盗まれたiPhoneは、1時間ほどで手元に戻りはしたものの、結局、犯人も手口もわからず、厳密にはiPhoneに小細工が何も仕掛けられていない保証もないので、未だに釈然としていません。自分では、ある程度リスク管理に注意を払っていても、こういうことは起こり得るのだという、警告と喚起としてのエントリーです。あと、macOS Catalina 10.15のFind My機能、マジ期待!

新規オープンのオシャレ温泉旅館で

先日の東京出張の時、新宿に新規オープンした温泉旅館に泊まりました。サイトを見る限り、なかなか洗練されていて、オープン記念で少しディスカウント価格になっていたのもあって、駅から少し離れてはいたものの、ここをチョイス。
その夜は、取引先の接待の後、やや遅めの時間にチェックインしました。確かに真新しいジャパニーズモダンな施設で品もよく、小洒落た雰囲気でした。駅からの距離や、受付の外国人スタッフが玄関のドアを『窓』と言ったことは、別に何も問題ありませんでした。

何はともあれ、部屋に入ったらいつものようにデバイス類を全て充電。当日のうちの残務を確認したり、明日の予定を確認しながら、荷物を整理しました。いつも通り、着替えが最小限の出張だったのと、予想外に日中かなり汗ばんだので、今夜は洗濯の日。疲れてはいましたが、ランドリーコーナーを探しました。この旅館の自慢の風呂が最上階にあって、その数階下にランドリーコーナーがありました。

部屋にはオシャレなシャワーもありましたが、折角の温泉旅館なので、深夜でも入らないという手はありません。その時点で深夜1時前だったので、浴場が閉まる26時までは、まだ余裕で間に合う時間でした。先に洗濯をスタートさせ、風呂上がりに乾燥機に掛ければOK。眠たければ部屋に持ち帰っても、チェックアウトまでに乾くはず。浴衣に着替え、洗濯物と、100円と500円の小銭、タオル、直前にコンビニで買っていたゼリー、iPhone、ルームキーを持って部屋を出ました。ゼリーは風呂上がり用で、iPhoneを持っていったのも、単に、洗濯機と乾燥機の運転が終わるまで待つためでした。

ランドリーに着いてみると、洗濯機は200円。しかも500円硬貨は使えないため、仕方なく両替も兼ねて自動販売機でDr Pepperを130円で購入(なぜここまで来て硬貨を強いる!?という別の問題は、この後吹き飛びますが)。洗濯の残り時間が30分以上あるのを確認し、最上階へ。

屋上の露天風呂から新宿の夜空を堪能、呑気に…

空いているだろうと思っていたところ、まだそれなりに人がいて賑わっていました。なるほど、休憩コーナーからの夜景もまた絶景。水を飲んでくつろいでいる男女や、無料のアイスキャンデーで火照りを冷ましている家族もいました。

脱衣所には、棚のすぐ横に4桁のダイヤル式貴重品ロッカーがあったので、iPhoneやコンビニ袋をまとめて突っ込みました。ロッカー番号は、自分が普段からよく使ういくつかの番号のうちのひとつをチョイス。ロック番号も、同じように記憶しやすい番号にセットし、ロックを確認した後グリグリ。ダイヤルをカバーする扉もきっちり閉じました。メガネは、周囲が見えないと危ないので、最近掛けたまま。浴衣を脱いで、いざ浴場へ。

かかり湯をして、露天風呂へ直行。ロビーやエレベーターを見ても、日本人客は少なめの様子。なるほど、狭いながら、屋上の開放感は確かに格別。新宿の夜空に浮かぶ星や月と、タカシマヤタイムズスクエアや副都心のビル群をの夜景を眺めながら、湯に浸かれるとは。

貴重品ロッカーが開けられて中身が消えた!

風呂から上がって、一番最初に嫌な気がしたのは、ダイヤルロッカーのカバーが開いていたのを目にした瞬間。すぐに扉を開いたところ、中身がすべて消えていました。
『やられた!』と、一気に汗が噴き出しました。一応、目に付くロッカーで、未使用の扉を全て開けてみましたが、当然、中はすべて空っぽ。この間30分未満。手慣れた窃盗犯なら、もうすでにデータを抜いて、デバイスも初期化済みのはずでしょう。
真っ先に考えたのは、ダメ元でiCloudの盗難モードと、リモートワイプ、Dropboxのリンク解除、クレジットカードの停止や警察への被害届。自分以外、誰のモバイル番号も覚えていませんし、帰りのフライトの電子チケットや、帰りまでの代替の端末をどうやって手に入れるか?不適切動画や写真の類はないのでいいとして、仕事関係のトラブルだけは、何としても避けたいところ。さて、これをどの順番で実行するか?もちろん、寝るのは諦めていました。

焦る時こそ一旦落ち着いて、冷静に戦闘モード突入!

とにかく、浴衣を着て、フロントへの館内電話の受話器を握り、事情を説明しました。ほどなくして、スタッフの人がスペアキーを手に脱衣所へ。通り一遍の確認と、『不審者の出入りがないか防犯カメラを確認する』という、あまりあてになりそうにない話を後に、一旦、部屋に戻ることにしました。この時、終わった洗濯物をピックアップして降りたので、後から考えれば、冷静さは失っていなかったようです。

湿った洗濯物をハンガーに吊るしながら、エアコンを適当にセットし、酔いも完全に覚めきった頭を高速に回転させました。
すぐにMacBook Proを開き、iCloudにログインして、盗難モードに設定。人様のサポートやテストで使ったことはあっても、自分用にリアルに使うことになるとは。同時に、DropboxのリンクしたデバイスからiPhoneを削除。位置を確認したところ、まだ旅館の建物から移動していませんでした。サウンドを強制再生させ、メッセージ送信 “I KILL U”。冷静にブチ切れながら、自分が戦闘モード突入したことを認識しました。『よろしい、ならばとことん戦うまで』。

iCloudの紛失モードをONに
iCloudの紛失モードをONに

覚悟は決まったので、すべてのフロアで探索を実行。ホテルのスタッフを付き合わせている余裕はありません。MacBook Proを手に部屋を出て、17階から1階ずつエレベーターを降りてフロアを移動し、iCloudでサウンドの強制再生を繰り返しては、耳をそばだてる作戦に出ました。部屋がピンポイントで特定できなくても、せめてフロアがわかれば、次の対策が取れます。

iPhoneの位置情報を確認
まだ他の場所へ移動されてはいない様子

移動しては、MacBook Proを操作し、静かに耳をそば立てる繰り返し。熱を持っているのが、MacBook Proなのか、自分なのかよくわかりません。浴衣の背中が、ぐっしょりと湿って張り付いていましたが、そんなことはお構いなし。むしろ、服に着替えてくるべきでした。途中、エレベーターで一緒になった2人がいました。また、あるフロアからは談笑する声も。端から見た私は、夜中に妙な行動をする怪しい日本人にしか思えなかったはずです。監視カメラにも記録されているはず。

iPhoneのサウンドを強制再生
iPhoneのサウンドを強制再生させながら、深夜の捜索

5階ほどまでフロアを降りた時点で、実は諦め半分の気分になりかけていました。デバイスの情報取得に何度か失敗していたこともあって、『手慣れた犯人なら、アルミホイルで包んだ上で枕で覆ったり、冷蔵庫に突っ込んでいるかも…』と、やや弱気になっていました。

いきなり手元に戻ってきた、ものの…

そんな時、エレベーターに乗り込んできたのが旅館のスタッフで、『もしかして、iPhoneを探しているお客さまですか?』と声を掛けてきました。ふと見れば、手元に四角いデバイスと、コンビニの袋を持っているではないですか!

どこで見つかったのか聞けば、『浴場のロッカーにちゃんとあった』とのこと。いやいや、それだけはあり得ません。それでも、何度聞いても詳しい説明はなく、ただ同じことを繰り返すだけでした。
話をしているスタッフは、チェックインを担当した人でした。ロッカーのどこに、どのような状態で見つかって、誰が発見したのか?防犯カメラには、何が映っていたのか?『多分、あなたの記憶違いでは』とこそ言われませんでしたが、何故かやたらと私を納得させたがっていたのが、とても気になりました。多分、『ありがとうございました』とは生返事をしたはずですが、まったく記憶にないまま、とぼとぼ部屋へと戻りました。

釈然としないまま夜は明ける

中身を確認したところ、チェックイン直前で買ったゼリー、Dr Pepper、その釣り銭、元のルームキー、そしてiPhone、全部あります。ただ、iPhoneの表面のガラスフィルムの端には、荒く扱ったと思われる軽い引っ掻き傷が付いていました。
一旦、盗まれたものが戻ってきたことは、確かによかったことではあります。未だに信じられない気もしています。手元になかったのは、せいぜい1時間ちょっとのこと。しかし、何とも釈然としません。誰かが一度は盗んだものの、私がしつこく追いかけているのを知り、面倒になってロッカーに戻したのか?仮に、スパイウェアを仕込まれて戻ってきていたら?私の勘違いにさせたがるのはなぜ?むしろ、酔っ払って全部本当に記憶違いという可能性は!?
それ以上は、事実関係を争っても仕方ないのと、犯人を捜し出したところで、得られるものが、気分的な納得以上のものになり得ないこともわかっていました。明朝からの予定を変更せざるを得なくなるのも、本意ではない。真夜中に一気飲みしたDr Pepperが、疲れ切った心身にやけに沁みました。

リベンジと、教訓と

iPhoneの着信ログ
着信ログもしっかり残っていました

さて、翌朝。私はささやかなリベンジを果たしました。iPhoneをジップロックに入れ、ハンドタオルで包み、タオルと一緒に風呂場にまで持っていきました。これで盗まれる心配はありません。
今や、部屋に置いたままにする方が安心できない気もする。嫌な気分はそれとして、朝風呂の快適さは別。そう思いたい。とはいえ、脱衣所に脱いできた浴衣を盗られていたらどうしよう…
部屋へ戻ろうとすると、今度はドアが開きません。恐らく、再発行されたカードキーのどちらか(または両方!?)が無効になる処理がされたのでしょう。仕方なくまたフロントへコールを…と思っていたところ、お掃除のスタッフの人に開けてもらいました。Thanks Ms!

身支度を整える中で、妙に冷静にもなっていました。自分に落ち度があったとしたら、どこか?どうやったらリスクを回避できたか?また、盗まれたiPhoneの行方を追いかけたドキュメンタリーがあったこと、ライブハウスの施設内ロッカーで盗難被害に遭った話などを思い出していました。
いろんなことモヤったまま、1つだけはっきりしていることは、残念ながら私はもう、その温泉旅館に宿泊することはないだろうということ。そう肝に命じた私は、チェックアウトのときも、この件に関してまったく何も声を掛けられることもなく、次の目的地へと踏み出しました。

Short Film: Find my Phone – Subtitled
iPhoneを盗まれたオランダの映画学校生徒のドキュメンタリー作品。窃盗犯にスパイウェアを入れたAndroidフォンをわざと盗ませリモートで写真やSMS、音声ログを取得して追跡。復讐だったはずが意外な結末に…