MacBookの盗難対策やってるんだから起こして邪魔しないでよ!

悪夢のiPhone盗難事件からいつの間にか1年過ぎていました。あれ以降、いろいろな防犯セキュリティー対策を調べたり、試しています。そこで見つけたのが、Do Not Disturbという、MacBook Pro/MacBook Airの盗難防止サービス。ホテルのドアに出しておく、「起こさないで」のサインですね。4ヵ月ほど使ってみて、有効だと思ったので紹介します。

Do Not Disturbの特徴

Do Not Disturb
Do Not Disturb
  • MacBook Pro/MacBook Airで、天板が開いた日時を記録し、iPhoneへ自動通知するユーティリティー。
  • iPhoneアプリとセットで使用。iPhoneからは、カメラを起動して撮影したり、MacBookを強制終了させられる。
  • 無料!(サブスクリプションの予定はある模様)

Do Not Disturbはこんな人向け

Do Not Disturbインストール
Do Not Disturbインストール
  • MacBook Pro/MacBook AiriPhone(またはiPad)ユーザー
  • MacBookを少しでもセキュアに使いたい人
  • コワーキングスペースやカフェ、セミナー、移動中など、出先でもMacBookを開く人
  • デバイスが盗難に遭った・遭いそうになった経験者!
  • デバイスの管理権限を持っている人。

Do Not Disturbのココがいい!

  • 開発するDigita Security社は、エンタープライズ向けAppleデバイスの管理システムを提供するJamf社の傘下。ちなみに、研究員は元NSA(アメリカ国家安全保障局)。
  • 一旦、インストールしたら後は放置でOK。
  • バックグラウンドでメモリをほとんど使わない

Do Not Disturbのココは注意

  • アラートが送信されるのは、MacBookの天板が閉じた状態から開かれた時だけ。スリープからの解除には反応しない。
  • 逆にMacBookからiPhoneを操作したり、アラートやデータのリモート消去の機能はないので、「探す」と併用が必須。
  • iPhoneアプリから操作できるのは、アラートが表示された後、5分間だけ!通知に気がつかずに放置していたら、時間切れに。
  • オーディオの録音や、キーボードのストロークの記録機能はない。
  • デバイスの位置情報は表示しない(取得はしてるはずだが、今は使われていない)。
  • 写真撮影の時、MacBookのカメラランプは点灯してしまう(相手が気付いちゃうじゃん!)。
  • カメラをシールなどで覆われてしまえば、対抗手段がない。

Do Not Disturbを使うまでのステップ

  1. iPhoneアプリをインストールする。
  2. MacBookにアプリケーションをインストールする(iMacやMac miniにはインストールできない)。
  3. MacBookアプリケーションを設定。QRコードが表示されるので、iPhoneアプリで撮影してデバイスをリンクする。
  4. macOSの起動と同時にバックグラウンドで起動させたり、メニューバーをオフにしたり、好みでカスタマイズする。
  5. macOSのセキュリティー設定でカメラを許可する。
  6. iPhoneアプリで「通知」を許可する。
  7. MacBookの天板を一旦閉じ、また開いて、iPhoneアプリに通知が来るのを確認する。カメラ撮影や強制終了、ログをチェックしたら、後は放置でOK。

なぜ、コンシュマー向け盗難防止システムがないのか?

MDM(モバイルデバイスマネージメント)といわれる、モバイルデバイスをリモート操作・管理できるサービスはあります。ただしこれは大企業向けが前提で、小規模な組織や個人レベルで使える、デバイスの盗難防止アプリケーションやユーティリティーは、ほとんど見掛けません。それはなぜなのか?

一番の理由は、Appleのセキュリティーの方針上、デバイスに対してサードパーティー製アプリで操作できることが制限されているからです。

カメラやマイクを操作して撮影や録画・録音したり、位置情報を記録したり、それらの情報をリモートから取り出すような操作は、他者に悪用されるリスクも抱えています。リスク対策したつもりが、逆にリスクを増やしてしまうのは、セキュリティー面で大きな脅威。実際、子どもや高齢者の見守りではなく、怪しげな探偵捜査やストーキング目的のアプリがあるほどです。管理体制が十分ではない組織や個人に、強力な追跡機能を許可してしまうと、収拾が付きません。

もう一つの理由は、デバイスを追跡して、メッセージを表示させたり、リモートでデータを消去する機能なら、iCloudの「探す」でできるからです。実際、私がiPhoneを取り戻したのも、これのお陰という面もありますし…。ただ、盗難の被害に遭った場合、できればカメラで撮影・マイクで録音して、証拠を記録したい!

個人情報の取り扱いやセキュリティーを重要視するAppleですが、次世代のOS、macOS Big Sur 11.0とiOS 14では、いろいろな機能でさらに強化されそうです。また、Apple製の落とし物追跡タグが噂されていて、個人的にはとても注目しています。

今回紹介したようなサービスも、Appleの方針によっては、ある日、使えなくなる可能性もゼロではありません(いつか来た道…)。ただ、Do Not Disturbを開発する親会社Jamf社が、エンタープライズ向けAppleデバイスの管理システムを提供しているので、何らかの落としどころには期待していいと思います。機能が追加されるなら、サブスクリプションで購入したいほど。


高度デジタル社会で、セキュリティーの重要性は高まる一方です。ただ、安全なデバイスの管理と個人情報の管理は、諸刃の剣。結局は、得られるメリットと手間、失う情報や信頼の重要度、コストバランスなどで妥協点を探り続けるしかありません。

実は、香港の民主化運動や、Black Lives Matter運動で活躍したサービスがあり、これが個人レベルのセキュリティー強化でも役立つ気がしています。クリティカルな状況は違っても、人権や生命、財産という点では地続きですからね。続報はまた!