『身体を売ったらサヨウナラ – 夜のオネエサンの愛と幸福論』 鈴木 涼美

以前読んだ本の感想を、今頃書いておくシリーズ。
とにかく、著者の頭の良さがわかりすぎる。
書かれている内容は、サブタイトル通り、都会の夜の街を中心とした女と男の愛憎というベタで普遍的な世界だ。体温や体臭、血、汗、涙が生々しく入り混じり、肉体感覚が刺激される。それでいて、自分のブランドや商品価値、タグ、ポジショニングを、はっきりと意識する、極めて冷静な視点を感じる。夜の昆虫採集で集めたガラスケース入りの標本を眺めるような、冷淡に見放した視点といってもいい。この本よりも3年前に出版された『「AV女優」の社会学』同様、夜の女性を取り巻く社会学だ。
語り口や選ぶ単語の散りばめ方は、汚い水たまりに反射する煌めくネオンのようで、夜空を儚く漂っていく香水の匂いがついたシャボン玉のようでもある。経済紙の記者とAV女優を掛け持つ、強烈なインパクトのある経歴。周りに集まる喧騒や下衆な詮索を、彼女はさらりと飛び越え、時に賢く利用しもする。煽りタイトルはそれとして、著者にとって売ったりサヨウナラしたりできない、自由と独立、カワイイの大切さを感じる。
余りにも気になっていたからか、間違って紙と電子書籍の両方とも買ってしまった、初めての本になった。いつの間にか映画化されてAmazonビデオにも出ていたが、恐らく本の方がオススメ。