
スラング辞書にすら出て来ないヤバイフレーズが、そのバックグラウンドと共に解説されている。数々の表現が浮き彫りにするのは、格差、軍事、マイノリティー、人種差別、宗教対立、ドラッグ、政争、ゴシップ、メディア、テクノロジーなど、とにかく多岐に渡る。アメリカ西海岸在住のコラムニスト・映画評論家としての、著者のフィールドの広さを感じる。
これは、2009年6月から約3年間「週刊文春」に連載されていたコラムの書籍化だ。どんなに新しくても2年以上前の話題なので、中には懐かしいネタもあるし、定着した表現もある。
紹介されている個々の表現よりも、アメリカという国がどのような姿をしているのかをディープに把握できるガイドだ。善くも悪くもその時の世相を反映したニュアンスなどが少しずつ変わっているところと、根底にある文化は今と大差ないところの両面が垣間見える。言葉は生き物。流行語や表現が目まぐるしく変化する中で、アメリカという斜陽の大国の姿を、はっきりと映している。時代を色濃く反映するさまざまな言葉で短く切り取った、スナップショットのアルバムを眺めているような感じだ。