『朝日新聞校閲センター長が絶対に見逃さない 間違えやすい日本語』前田 安正

この手の本で定番の表現や慣用句もあれば、なるほどと思う項目も多い。もちろん読み手の個人差が大きいだろうが、勉強不足の私には3割ぐらいが、初めて接する表現だった。

ただ、その多くが『横綱昇進の口上や日本語検定試験以外で、一体いつこれを使うのか?』と感じる表現に思えた。故事を源にした詳しい背景説明も、ややページを割きすぎの印象を持った。なるほど、高齢読者がメインの新聞という媒体で培われてきたノウハウなのだろう。一応、Evernoteにクリップしたもののそのほとんどは、改めて意味を調べ直すことはあっても、自分が使う機会は無い気がする。

著者も書いている通り、言葉や表現は人の営みと共に変わっていく生き物でもある。本来の意味を無視して流行廃りに流される流動食のような表現ばかりも貧しいが、正しさに拘って固いものばかりに執着しても味が分からず顎が疲れてしまう。柔軟に表現の幅を広げる前の、基本となる型と味を把握できる参考資料にしておきたい。